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金利とインフレの関係は難しい

池田信夫氏の9/11付けアゴラ記事「金利が上がったら国債の価格が下がるのはなぜ?」へのコメントです。


中田敦彦さんも言ったように、インフレで金利が上がっているとき、減税や給付金で財政赤字を増やすのは危険です。「物価高対策」どころか、インフレはひどくなり、最悪の場合は国債が暴落して金融危機が起こります。

まず日銀が政策金利を上げてインフレをおさえ、政府が財政赤字を減らして長期金利の上昇を防ぐことが大事です。国債の金利は政府の財政に対する不信のあらわれなので、赤字が増えると長期金利が上がります。

上の引用部、因果関係が少々入り組んでおります。まず、「インフレで金利が上がっているとき」ですが、インフレになると自動的に金利が上がるわけではないのですね。その次にあります「日銀が政策金利を上げてインフレをおさえ」ようとするから金利が上がります。要は、金利は日銀が決める、人為的な操作因子なのですね。

インフレ抑制には金利の引き上げが効果的ではあるのですが、エネルギー価格高騰のような外的要因によるインフレに対しては効果がない。好景気ゆえの消費拡大を原因とするインフレには効果的ですが、それは、景気を冷やしてインフレを抑制しているのですね。外的要因によるインフレは、景気を冷却する要因でもありますから、ここでの金利引き上げは事態を悪化させます。

問題は、通貨流通量が増え過ぎたが故のインフレリスク(貨幣価値の低下リスク)で、これが、「政府の財政に対する不信」に相当するのでしょう。これに対しては、小泉政権が行った「行財政改革」、すなわち、政府支出の抑制が最も効果的で、現にこの時は国債発行残高の増加が抑制されております。逆に、民主党政権時代の極端な円高は、国内産業を疲弊させ、海外に逃避させて、税収を低下させ、経済悪化にバラマキに対応したことから国債発行残高を増加させて、消費増税に追い込まれております。

結局のところ、国内諸制度を効率化して、政府支出を抑制し、国内で創出する価値を高めること。これが大事なのであって、インフレデフレそれ自体は大きな問題ではない。要は、極端な動きをせず、国際的なバランスを乱さないよう、変な常識にとらわれず、適宜コントロールすればよい、ということでしょう。


(以下、9/12追記)一つ書き忘れておりましたので追加しておきます。「金利引き上げによるインフレの抑制」には、「自国通貨高による輸入品価格の低下」という効果もあるのですね。多くの人は、円高時代の優雅な日々を懐かしみ、あの時代よもう一度、と考えておられるのではないでしょうか。

でも実はこれこそが最も危険な金融政策で、かつて世界で生じた多くの金融危機が、人為的な自国通貨高政策によって発生しております。

1992年に激化したポンド危機は、無理にポンド相場を維持しようとした英国がソロスらに狙われ、そして敗北した結果ですし、1997年にタイで発生したバーツ危機は、バーツをドルに連動させていたドルペッグ制がヘッジファンドに狙われたことに端を発しております。さらに、2001年から2020年代にかけて断続的に発生しましたアルゼンチンの通貨危機も、1991年に始まる兌換法(1ドル=1ペソの固定相場)がその根底にはありました。

自国通貨高は、安価な輸入品により国内物価を下げ、国民生活を豊かにするという目先の効果がある一方で、国内の産業が疲弊し、貿易赤字が拡大する結果、いつまでも続けられないという性質があります。これは、ファンドにとっては大チャンスなのですね。いずれ負けるとわかっている相手との勝負、勝利はお約束なのですから。

我が国も2010年代初頭の民主党政権時代には、極端な円高が2年ほど継続いたしました。我が国の場合は、自国通貨防衛を第一と考える財務官僚が政権を説得できたのではないかと思いますが、いずれにせよ、アベノミクスで回復することに成功した。こんな危機は、繰り返してはいけません。

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