池田信夫氏の10/14付けアゴラ記事「イノベーションは『積極財政』では起こらない」へのコメントです。
日本と韓国は、ほぼ同じ時期に深刻な経済危機を経験した。1990年代に日本では不動産バブルの崩壊による不良債権の処理に13年かかり、その間に世界ナンバーワンだった製造業は日本から逃げ出してしまった。
他方、韓国は1997年のアジア通貨危機で金融危機になり、IMFの資金援助を受けた。韓国人がIMF時代と呼ぶこの時期に財閥が解体されて失業者が激増したが、財閥企業をクビになった若者が起業し、空前の創造的破壊が起こったのだ。
このエントリーで触れられていないのがウォンと円の対ドルレートの推移なのですね。1990年代の、「世界ナンバーワンだった製造業は日本から逃げ出してしまった」原因は、不良債権処理などではなく、ドル円が200円台前半だった80年代から90年代には100円台前半まで下落した急激な円高が主な原因だったのですね。
一方のウォンドルは80年代の0.15セント/ウォン前後から0.1セント弱までのウォン安が進む。ウォン円に至っては、同じ時期に0.3円あたりから急速にウォン安が進み、0.1円/ウォン前後で落ち着いております。https://ecodb.net/exec/trans_exchange.php?type=EXCHANGE&b=USD&c1=KRW&ym=Y https://ecodb.net/exec/trans_exchange.php?b=JPY&c1=KRW&ym=Y&s=&e=
この間の日本人と韓国人が置かれた経済状況は、真逆でした。何の努力をせずとも安価な輸入品で暮らしが楽になりバブルに踊った日本人を横目に、急激なウォン安の招いた生活苦にあえいだ韓国人は、必死に工業化を進め、情報技術の普及にいそしんだ。ここに、彼我のイノベーションの差を見出すのが普通の見方だと思うのですね。
では、今後の日本はどうすれば良いか。もちろん、生活苦に落とし込めばよい、などという解決策はあり得ません。要は、国民が緊張感をもって働くことが肝要で、それには、真の能力主義を徹底すること、これしか、日本のイノベーションを盛んに興す道はないと思いますよ。