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お金はあるけど投資機会がない

アゴラ編集部の11/5付けアゴラ記事「『日本成長戦略本部』は昭和の産業政策の焼き直しだが、お金がない」へのコメントです。


昭和の産業政策には成功したケースもあったのに、平成以降は成功例が一つもありません。その原因はいろいろありますが、大きいのは政府にお金がなくなったことでしょう。

平成元年は1988年です。1985年のプラザ合意後、1987年にはドル円が150円/ドルを割り込みました。同年2月、行き過ぎたドル安を是正すべきとのルーブル合意がなされたのですが、ドル円が150円以上に戻すには2024年までの37年間を要しております。https://ecodb.net/exec/trans_exchange.php?b=JPY&c1=USD&e&s=&ym=Y

この間、我が国の産業は国外への脱出が相次ぎ、0.5%以下のGDP成長率が続きました。ちなみに世界のGDP成長率は、大小ありますが、平均すれば3%台後半といったところです。ドル円が150円レベルに戻ってきたことは非常にラッキーですが、一旦海外に逃避した工場の国内回帰は容易ではなく、新製品や新規分野での国内産業産業の振興を図ることが現実的でしょう。我が国には、少子高齢化や資源面で不利な点が多々ありますが、技術面では優位に立つものも多く、これをてこに経済成長を図るという考え自体は間違っていないのですね。

高市首相は「潜在成長率を上げる」と言っていますが、潜在成長率を上げるのに必要なのは、補助金ではなく規制改革です。

規制改革も必要ですが、まずは、国内の産業が成り立つようにすること。国内産業のディスアドバンテージは減らしておく必要もある。具体的には、行き過ぎた円高の防止と低金利は維持しなくてはいけません。そして、新しい産業の担い手である優秀な技術者・研究者が活躍できる社会制度にする。このための雇用制度の改革や、研究資金配分システムなどに手を付けなくてはいけない。まあ、そういうことを高市政権はこの先されるのではないかと思いますが。


こちらの方も大事ですね。

メンバーには財政バラマキ派と元リフレ派のエコノミスト。5人がクオータの女性。あとは財界や労働組合の代表などで、斬新な提言は期待できません。

実は、「技術をいかに経済に生かすか」という方法論自体が、一つの技術なり、学問領域になっております。これ、英語では”Management of Technology”、略してMOT、日本語では「技術経営」などと言いますけど、学会を「日本MOT学会」というくらい、英語の方が通りが良いのですね。

仕事としてこの手のプロジェクトを手掛けるなら、まず、その分野の専門の方に相談するのが良いのではないかと思います。まあ、林総務大臣の奥様のご専門でもありますけど、ここは、学会なり大学なりに相談するのが早いのではないでしょうか。

同様な問題は、財務関係でもあり、財務の問題は、工業から流通までを含む、経済全般のダイナミズムにかかわるにもかかわらず、財務政策を財務の専門家のみで決めてしまおうとする。だから「ザイム真理教」などと呼ばれてしまうのですね。

何事によらず、政策を立案する際には、狭い領域の専門家だけではなく、それが影響を及ぼす広い範囲の『知』を反映する形で検討するのが良いのではないかと思います。


返信が付いております。

土塊

素朴に違和感があります。

プラザ合意の後、米国はインフレが進んでドルの国内の購買力が1/2から1/3に減価しているのに、そのドルに対してドル円150円がラッキーだとか適正だとかなんて何の冗談かと思う。

弱いドルに更に負けて酷い状況だと思うよ。


瀬尾 雄三

土塊さん

> プラザ合意の後、米国はインフレが進んでドルの国内の購買力が1/2から1/3に減価しているのに、そのドルに対してドル円150円がラッキーだとか適正だとかなんて何の冗談かと思う。

プラザ合意以前のドル円は230円前後で推移していました。この水準は、確かに円が弱すぎて、日本製品はドル換算すると非常に安価で、その結果世界市場を席巻していたのですね。https://ecodb.net/exec/trans_exchange.php?b=JPY&c1=USD&e&s=&ym=Y

プラザ合意は、安すぎる円を適正水準にして、貿易不均衡を訂正しようとしたのですが、その時点で妥当と考えられた水準は165円/ドルで、150円/ドルを割ると行き過ぎた円高で、日本の輸出産業を壊滅させかねない危機的水準と考えられたのですね。これは各国共通の認識で、これに対応するため、ルーブル合意がなされ、行き過ぎたドル安を是正することとなりました。

しかしこの合意は実行されず、120円/ドル付近の円高が続いてしまいました。この結果、日本の輸出産業の多くは採算が合わず、中国や東南アジア諸国に工場を移す「空洞化」が進んだのですね。これに伴い、日本国内経済の長期停滞(失われた30年)が生じ、国債を発行し続け公共投資等を行う「外需から内需へ」の政策がとられました。しかしこんな政策は長続きできるわけもないのですね。

日本経済が停滞する一方で、米国や欧米諸国の経済は成長を続け、円が低下する。これも当然の結果で、これに対応する手は国内産業を振興するしかない。そのためには、輸入品との競争力を強化し輸出を容易にする適正な為替水準である必要があります。日本の競争力はプラザ合意の時点からむしろ弱体化する方向であり、150円でも円高に過ぎるかもしれません。少なくとも、これより円高にするのは論外というしかありません。


瀬尾 雄三

もう一つ大事な点を指摘しておきますね。それは、「フリーランチ(タダメシ)」などどこにもない、ということです。金利を上げて円高にすれば海外製品が安く手に入り、何の苦労をしなくても、国民生活が豊かになる。なんでそうしないんだ、馬鹿じゃないかと考える人もおられるのですが、それって「タダメシ」なんですね。

金利を上げてなぜ円高になるかと言えば、海外の資金が円資産に向かうから。外国人が金利の上がった日本の円建て債券を購入したり、円預金に向かうから。でも、国内に資金需要が少ないため、日銀の当座預金が積み上がり、これに高い金利を払い続けることになるのですね。

これって、日本全体としてみたら、海外からお金を借りて贅沢な生活をするということなのですね。こんなやり方は長続きしない。現にタイやアルゼンチンのポピュリスト政権が同様のやり方で通貨危機を招いているのですね。

どの国の国民であっても、豊かな生活をしようと思えば国内で価値を生み出すしかない。農業でも工業でもよいのですが、高く売れる製品をより多く生産することで国民が豊かになる。これを可能にするためには、高い技術が必要だし、これを生み出す知恵者が必要なのですね。

これを楽ができるといって円高にしてしまうと、国内の産業をつぶしてしまう。技術が海外に流出してしまう。その結果が失われた30年なのですね。今それが戻りつつある。喜ばしいことだというしかありません。