コンテンツへスキップ

「空が落ちてくる」みたいな話

内藤忍氏の11/21付けアゴラ記事「日本国債はデフォルトせず、年金制度は破たんしないという『怖い未来』」へのコメントです。


日本国債はデフォルトしないし、公的年金制度は破たんしない。でも、それが国民の多くを経済的に重大な危機に陥れる。何とも恐ろしい未来です。

前半は正しいけれど、後半はどうでしょうか。なぜそんなことが言えるかが、むしろ疑問です。11/11付けの時事通信は、次のように伝えています。https://www.jiji.com/jc/article?k=2025111100236&g=eco

財務省が11日発表した2025年度上半期(4~9月)の国際収支速報によると、海外とのモノやサービスの取引、投資収益の状況を示す経常収支は前年同期と比べ14.1%増え、17兆5128億円の黒字だった。黒字額は半期としては過去最大で、輸入額が縮小し、貿易収支が黒字に転じたことなどが要因。

日本は世界から稼ぎまくっております。稼いでいるのは民間ですが、政府には徴税権というものがあり、民間の利益を吸い上げることができる。これは、何も「酷税」と呼ばれるようなことをしなくても、普通に経済成長すれば税金も増える。現に、リーマンショック以降、一般会計税収は右肩上がりに増加しているのですね。https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/010.pdf

「空が落ちてくる」と言われれば、一般大衆の耳目を集め、新聞は売れるし評論家はもうかる。経済の先行きも「大変だたいへんだ」というのが商売のコツと心得ているのではないでしょうか。民主主義の世界では、政府も国民に困窮を強いるような真似はしがたいのですね。おかしな論説には、惑わされないようにしなくてはいけません。


国債がデフォルトに陥った国はいくつかありますが、高すぎる自国通貨ゆえのデフォルトがいくつかある点に興味を惹かれます。

例えばアルゼンチンは「兌換法」により、自国通貨ペソとドルとの交換比率を固定しペソの過大評価を招きました。この結果、外国製品が市場を支配し、国内産業が疲弊、貿易赤字と財政赤字が拡大し、国債デフォルトに至っております。

ギリシャは意図しての自国通貨高ではなかったのですが、統一通貨であるユーロが、工業競争力の強いドイツなどによりギリシャ経済にとっては高すぎる評価となり、こちらも貿易赤字と財政赤字が膨らんでデフォルトに至っております。

その他、ロシアのデフォルトやタイの通貨危機も、固定相場制がその一因となっております。これらに共通する要素は、実力以上の自国通貨高と、その結果としての貿易赤字、および国内経済を維持するための財政赤字がその背景にありました。

翻って我が国を見ますと、国債発行残高が積みあがっておりますので、財政赤字という問題は確かにある。貿易収支はアベノミクス後はプラスとマイナスの間を行ったり来たりしておりますが、資本収支の大きな黒字がある。為替は、このところ『円安』と言われておりますが、長期的に見ればプラザ合意の目標としたレベルに近付いただけです。これを円高に誘導する「自国通貨高政策」をとらなければ、まず日本国債デフォルトのリスクは生じないのではないかと思われます。