アゴラ編集部の12/8付けアゴラ記事「7~9月実質GDP下方修正でも経常黒字は拡大:円安と空洞化という残酷な現実」へのコメントです。
日本の経常黒字が所得収支主導となったのは2010年代からの流れで、企業が国内では投資採算が取れず、成長機会を海外に求めた結果である。円安が進むにつれ、海外子会社の利益は膨らむが、それらはGDPに含まれず、国内の雇用や所得に結びつかない。
「円安で輸出が増えて景気が良くなる」という考え方はすでに時代遅れになっている。輸出大企業は生産拠点を海外に移しており、円安メリットは本社の損益に限定される。
上の二つの引用部は、同じコインの裏表なのですね。つまり、2010年初頭の円高の時期に、国内生産業が成り立たず、海外に生産拠点を移した。この結果、国内の雇用や所得が失われる一方、海外子会社の利益が膨らみ、企業利益は確保されている。
そして、為替が円安に転じても、すぐに海外の工場が日本に移ることはない。なにぶん、プラザ合意の頃に妥当であったドル円は165円程度でしたから、これを上回る円安にならないと、海外に逃避した生産工場は戻ってこない。これ以上の円安が無理なら、国内の生産が回復するためには、日本独自の技術を生かした新たな工業を起こすか、カントリーリスクによる国内立地を目指すといった、コスト以外の要素に目を付けなくてはいけません。
一方で、国内雇用の7割を占める小売、飲食、医療、運輸などの内需サービス業は円安による輸入コスト増だけを背負い、実質所得は低下し続けている。
これは、一時的な現象です。というのは、輸入品のコストが上がれば、国産品の売値も上げることができる。売値が上がれば売る側の利益が上がり、従業員の収入も増えるのですね。消費者は、一方では稼いでいる、という現実を認識しなくてはいけない。そして、稼ぐ側で何とかすることを考えればよい。単純な話だと思うのですが。