杉山大志氏の12/16付けアゴラ記事「一目瞭然:米国では民主党州ほど電気料金が高い」へのコメントです。
ふうむ、この論文の論旨は、社会学の論文としては相当に抜けがあるように思われ、IER誌の学術的位置づけについてGoogle検索を掛けたところ、次の答えが返ってきました。まあ、そうだろうとは思いましたが。
結論から言うと、IER自身のウェブサイト等で公開されるレポートや記事は、一般的に学術的な意味での査読(ピアレビュー)を受けていません。
IERはアメリカを拠点とする非営利の政策研究機関(シンクタンク)であり、その出版物は特定の政策的視点や分析を提示することを目的としています。そのため、学会誌などに掲載される論文とは異なり、独立した専門家による厳格な査読プロセスを経ることは通常ありません。
参考までに、私が(はてな?)と思いました点を指摘しておきましょう。一般に、社会学的調査を行う際には、対象とするグループの職業や教育程度や経済的豊かさも同時に分析し、これらの影響を除去したうえで、調査対象とする因子の影響を見ていきます。
この全米の図を見れば、カリフォルニアやボストンといった、情報工学の進んだ地域が青い色をしており、AIやその他工業の電力消費が多ければ電気代も高くなるだろうということ、そして、この手の産業に従事する教育程度の高い人に民主党支持層が多そうだ、ということが一目で見て取れるのですね。この手の議論では、偽の相関関係の排除が基本です。そこを落とすと、間違った結論に行ってしまいます。