日刊スポーツから転載の12/19付けYahooニュース「田母神俊雄氏が断言『1年以内に中国の台湾や日本への侵攻が始まる可能性は…』」へのコメント(ブログ限定)です。
田母神氏は「中国の軍拡に恐れ慄いて中国を怒らせたら戦争になるから中国の要求を受け入れるべきという人達がいる。中国の情報戦にはまっている」と書き出した。
そして「アタマに来たから明日から戦争だという訳にはいかない。ホテルで300名集めてパーティーをやるにも2、3か月準備が必要だ。戦争では何十万人も動く、何百機の戦闘機が飛ぶ、何百隻の艦船が動く、これらが準備なしにできるはずがない。陸続きのウクライナ攻撃でも露は半年の準備期間を要している」と続けた。
さらに田母神氏は「中国は現在全く戦争の準備に着手していない。1年以内に中国の台湾や日本への侵攻が始まる可能性はない」と断言した。
「アタマに来たから明日から戦争だ」などということは、最初からあり得ません。「中国を怒らせたら戦争になる」などということもないのですね。そもそも、戦争というものは、不良や暴走族の喧嘩とはわけが違う。国家の命運をかけた一大事業であって、いくら独裁者であっても、そして彼が相当な馬鹿であっても、そうそう簡単に戦争をできるものではありません。
一方、その次の言葉「中国は現在全く戦争の準備に着手していない。1年以内に中国の台湾や日本への侵攻が始まる可能性はない」は、どうでしょうか。こちらは、米国の警告と、少々矛盾いたします。
一つは、以下の一文を含むデイリー新潮からの転載記事で、こちらが全く根拠がないとも思われないことが一つです。
米国議会の諮問機関である「米中経済安全保障調査委員会(USCC)」は11月18日に年次報告書を公表した。そこには、日本国民が看過できない指摘が含まれている。早ければ2年後の2027年にも、中国が台湾侵攻に踏み切る可能性があるとの分析である。
ここで、2027年という数字の出てくる理由は、人民解放軍の建軍100周年にあたる年であり、かつ5年に一度の共産党大会開催年にあたるということなのですが、果たして、これらの重要な行事の開催年に、台湾進攻という大事を同時に展開することがあり得るだろうか、というのが私の疑問です。
つまり、これらの記念すべき行事に際して、台湾統一という赫々たる成果をアピールする、という方がありそうな話であり、これら行事の開催は、台湾進攻に片が付いた後とするのが、ありそうなことであるように、私には思われるのですね。そう致しますと、来年2026年も、すでに危険な時期に突入すると考えた方が良い。来年3月の春節明けなどは、最も危険な時期になるのではなかろうか、と私は危惧いたします。
ただし、中国としても、負ける戦争はできない。台湾に侵攻してこれに失敗することは、侵攻しないよりもよほどマイナスが大きいのですね。そして、上の記事では、台湾進攻に成功するケースは、24のシナリオのうちわずか2つであること、そのための条件は、米軍の展開が遅れる、日本の米軍への協力が得られないなどであるとしております。
つまり、我が国が存続危機事態と認識することは、米軍への協力の前提であり、これを明言することは、中国の台湾進攻が失敗するとの予想を強化することに他ならないのですね。これは、中国に台湾進攻を思いとどまらせる効果こそあれ、戦争を招くような類のものでは全然ないのですね。
中国が高市氏に怒っていることは確かでしょう。でもそれは、「怒らせたから戦争になる」ということではなく、「台湾進攻の邪魔をしたから怒っている」というのが正しい。高市氏は、戦争を招いているのではなく、その全く逆の、戦争を阻止している。こう考えるのが正しいように私には思われます。
逆に、戦争を招こう、招こうとしているのはだれか。それは、中国を元気づける余計な一言を高市氏に言わせんとしている、我が国野党の各氏や、左寄りの日本のマスメディア、そしてこれに議論を提供している評論家各氏である。私にはそうとしか思えない。まったく、逆説的状況が続いているのが、いまの日本だ、というわけです。