コンテンツへスキップ

系統蓄電池をいかに活用するか

尾瀬原清冽氏の2/16付けアゴラ記事「送電線『から押さえ』がもたらす機能不全:蓄電池急増の裏で起きていること」へのコメント(ブログ限定)です。


アゴラ記事の要旨

電力関連のアゴラ記事には、理解に苦しむものが多いのですが、この記事もその例にもれません。まず、

蓄電池は揚水式発電と同様に、電気を貯めたり、充電した電気を放電したりすることができる。すなわち、蓄電池を大量に導入すれば、水力発電に適した川や渓谷がなくても、揚水式発電所を増設したのと同様の効果が得られるとの目論みから、経済産業省も蓄電池の導入に積極的なのである。

という点はまことにごもっともです。以前は出力一定の原発電力が夜間に余ることから揚水式発電の導入が進められたのですが、太陽光発電の容量が拡大した今日では、逆に昼間の電力が余り、揚水式発電だけでは足りないために電池の導入が進んでいるのですね。ここまでは、何ら不思議ではありません。

で、結論は次のようになっています。

最近導入された需給調整市場での調整力として収益を上げているという話もあるが、これも原資は私たちが納めている託送料金である。蓄電池の導入は電気代を値上げする効果しかない。直ちに導入をやめて、安価な大型石炭火力の供給力および調整力を活用すべきである。

この二つのパラグラフを見ての率直な印象は「なんでそうなるの?」ということでしょう。そして、ほとんどの人が思うことは、やり方、仕組みに問題があるのでは、ということでしょう。では、どこに問題があって、どうすれば良いか、という点が次の問いになるわけですね。

このエントリーでは、表題にありますように「送電線の『から押さえ』」が問題であるとしております。この「から押さえ」といいますのは、送電キャパシティの『予約』で、予約がタダで利用も条件になっていないために、すぐに使う予定のない蓄電池運用会社がさしあたり予約だけ入れておく、このため、送電線のキャパシティが今すぐ必要な需要家に割り当てできないという問題が発生しているというのですね。

問題の所在

でもこれ、送配電業者側のビジネスモデルに欠陥があるようにしか見えないのですね。つまり、キャパシティの『予約』といっていますけど、実態は『枠の割り当て』ですから、この『枠』に対して『送電キャパシティ当たり一日いくらの利用料金』を取ればよいのですね。

送配電業者の立場にすれば、割り当てたキャパシティ分の送電線を確保し維持しなくてはいけないわけですから、これは当然の権利といえるでしょう。第一、普通の家庭だって、キャパシティに対して固定料金を支払っている。何か、ずいぶんと、間の抜けた話のように見えるのですが、どこに問題があるのでしょうね。

もちろん、電力会社の方が、そうそう間抜け揃いというわけではなく、そういう解は当然知っての上で、あえてとぼけて、この問題を取り上げているという可能性もなくはない。その動機として、太陽光発電などやってもらいたくはない、というのが本音であるという『邪推』を、私にはどうしても抱かれてしまうのですね。

しかしもしその邪推が事実であったとすると、こんな主張が通るのは日本だけで、他国は太陽光発電と原発を、蓄電技術と組み合わせる形で電力網に結びつけるシステムを作ることは目に見えています。そして、これを効率的に運用するノウハウも、まず間違いなく獲得するはずなのですね。

そうなった未来がどうなるかを考えますと、少々、背筋が寒くなります。つまり、今の情報サービスのような形になってしまうのではないか、ということですね。具体的には、これら電力システムをうまく運用するノウハウと要素技術を保有する企業が日本のエネルギービジネスを牛耳ってしまうのではないか、ということなのですね。

今日のわが国の情報サービスは、Googleの検索、Amasonの購買、Microsoftのビジネスソフトウエアといった形でその根幹部分が押さえられている。エネルギーの世界でもこうなってしまいますと、日本の産業の一つの大きなパートが海外勢に押さえられることになる。エネルギー関連産業のすそ野の広さを考えますと、これが日本経済に及ぼすマイナスの効果は計り知れない。ならば、日本サイドで適当な措置を講じなければいけません。

解決の方向

民間企業による蓄電ビジネスは、実は歓迎すべきことであり、これら企業の利益と社会全体の利益がマッチするような社会システムを作り上げればよい。そうすれば、社会全体の利益が最大化するよう、これら企業は大いに努力するだろうし、研究開発や生産設備への投資も活発にやってくれるはず。お役人に任せるよりも、よほど効率的に事が進むはずです。

このような社会システムは、需要と供給をマッチングさせる「市場経済」であり、要はこれを実現するための仕組みを作り上げればよいのですね。その一つの例は、以前のこのブログでもご紹介した、直流送電技術を利用するものです。この具体的なやり方について、以下、簡単にご説明します。

まず、「日本電力流通機構」といった公的組織を作ります。これ、経産省のお役人が喜びそうなもので、おそらく提案をすれば本気で取り組んでいただけるでしょう。この機構は、直流送電網を保有すること、客先とのインターフェースとなるDC-DCコンバータを保有すること、客先の送電網への電力の出入りに応じて料金を徴収したり支払ったりすることです。

以前のブログで提案したように、電力代は送電網の電圧によって決めることにします。電力が不足しているときは電圧が低下し、この時の電力単価は高くなる。電力が余っているときは逆に電圧が上がって電力単価は低くなるのですね。

お客は、送電網の電圧を見て、自社の運用を決める。蓄電業者であれば、電圧が高い時(電力の安価なとき)に電力網より電力を得て充電し、電圧が低い時(高価なとき)にこの電力を電力網に送り出すことで、差額が利益となるのですね。

電力を消費する工場などでは、あまりにも電力単価が上昇したときは、工場の操業を一時的に停止することで、高い電気代を支払わずに済ませることも行われるでしょう。また、火力発電所であれば、電気代が下がった時には運転を止め、燃料を節約することも可能なのですね。太陽光発電所は、太陽が出ている間は、燃料費もかかりませんから、電力単価にかかわらず送電し続けるはずですが。

「日本電力流通機構」は、送電線とDC-DCコンバータを持ち、コンバータを顧客に貸し出して、電力の出入りに応じた料金を徴収したり支払ったり致します。コンバータは客先のニーズに合わせたキャパシティを持ちますので、必要な送電キャパシティもおのずと決まってまいります。

コンバータの貸し出しに対しては、当然、定額の料金をいただき、この実費との差額が機構の利益となります。また、出入りする電力単価に差を設け、この差額が送電網の固定費、維持管理費となるほか、一定の利益が出るようにいたします。なんぶん機構を支える方々は、かなりの高給取りですので、それに見合った利益も必要になるのですね。

なお、送電網の維持管理は現行の電力会社に任せ、必要な機器は電機会社に任せ、配線工事は現在の電力会社の下請け業者に発注すればよいですから、機構のすることは書類仕事とお金の管理で、その多くはAIで遂行できるのではないかと思います。こちらも、適当なシステムインテグレータに任せればよいのですね。

まとめ

と、いうわけで、問題に対しては「大変だたいへんだ」というだけでなく、前向きの姿勢で問題解決に取り組むのが良いと思います。

今回の私の提案は、我が国の電力システムを無駄のない形にするだけでなく、経産省の官吏にも、たぶん電力会社の幹部にも悪い話ではないし、核融合が導入されるであろう将来の電力システムにもマッチしたものになるはずで、技術で世界をリードすれば、電力設備を作る関連業界にもメリットのある話ではないかと思います。ちょっと検討されてはどうでしょうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です