池田信夫氏の2/21付けアゴラ記事「『旧姓単記』で夫婦同姓か夫婦別姓かという問題はなくなる」へのコメントです。
この問題に関しては、以前のこのブログでも議論しましたが、そこでの私の結論は、戸籍制度が維持されて、セキュリティの問題もない、良い考えだ、というものでした。これは、池田氏の指摘とは正反対です。そこで、何が違うのか、ちょっと考えてみました。
結論を先に述べてしまいますと、「戸籍に『公的書類に表示する氏名』などの形できちんと記載しておけば」良い、というわけですね。この名前、登録がなければ、戸籍名とすればよいし、夫婦別姓でやりたければ旧姓を書けばよい。芸名やしこ名で通したければそれを書いておく、という手もあるでしょう。これを前提として、池田氏の心配される点がどうなるかを、以下見てみましょう。
パスポートの氏名は(ICAOの規定で)legal nameしか使えません。これは今は戸籍名なので、パスポートに旧姓は使えません(併記できるが入管は通れない)。
これは、戸籍に「公的書類に表示する氏名」を記載し、公的書類の氏名欄をすべてこの氏名で表示するよう、法律できちんと定めれば、これがlegal nameになるはずです。
問題の本質は「名前が本人確認の鍵である社会」で複数の鍵を持つことにあります。セキュリティの原則は
一人=一意の識別子
です。ダブルネームはこれを壊します。
これは、公的書類に表示できる名前は、戸籍に記載した一つの名前だけ、とすれば、この原則は保たれるはずです。確かに、この名前は変更可能なのですが、現在でも改名は不可能でないし、そもそも結婚して姓が変わってしまうのはこの原則に反するようにも見えてしまいます。
マイナンバーが戸籍の代わりになるから、戸籍が不要と言われるのはその通りかもしれません。戸籍というのは、紙ベースの国民の出生にかかわるデータベースであり、セキュリティを維持するための本人確認の基本はここにあるのですが、これをマイナンバーに含めるというのはありでしょう。
でもそれは、ものの言い方で、戸籍制度を電子化して、マイナンバーのシステムと統合する、ということと同じなのですね。なお、マイナンバーは住民票と結びついていて、戸籍とは別系統の制度なのですが、この間のリンクは保たれておりますから、データベースを一本化するという手もあるでしょう。
その他、身分証明書のシステムも、マイナンバーと紐づけしなくてはいけません。そして、戸籍に登録した表示すべき名前が変更になった時点で、身分証明書に記載された氏名も変えなくてはいけない。つまり、戸籍データの変更を身分証明書の発行元に連絡するシステムも必要なのですね。
運転免許証やパスポートは、氏名変更に伴い、一旦無効にしなくてはいけない。これ、結婚して姓が変わるとそうしなくてはいけないはずで、これまでそのあたりが曖昧であったとしたら、これもセキュリティ上の問題であったといえるかもしれません。
まあ、そこまで厳密には考えていない、ということであるのかもしれないのですが。