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シナリオプラニングと統計学

角和 昌浩氏の5/15付けアゴラ記事「コロナ禍の未来シナリオ:英国政府の見解」へのコメントですが、例によりましてアゴラは私をブロックしておりますので、ブログ限定で、文字数を気にせず書くこととします。


アゴラエントリーの主張

このエントリーの筆者はシナリオプラニングの専門家、ということで、英国政府の諮問機関“SAGE(Scientific Advisory Group for Emergencies)”の提示したコロナの未来シナリオについて、その妥当性を評価されております。

このシナリオといいますものは、ありうべき未来について、最良のシナリオ、最悪のシナリオ、二つの中道シナリオ(楽観的シナリオと悲観的シナリオ)の、4つのシナリオを想定して、それぞれのケースでどのように事態が進展するかを論じております。

そして、このような考え方はシナリオプラニングの立場から妥当なものである、と5つの点から評価しているのですね。つまり、(1)未来は予想できないと認めていること、(2)事態の推移に因果の連鎖を想定していること、(3)未来の姿をイメージしやすくまとめていること、(4)シナリオの生起確率を与えていないこと、(4)4つのケースを示し中間ケースが正解とは思わせていないこと、の諸点です。

そして、最後の部分で、西浦博氏が厚生労働省の「アドバイザリーボード」で、オミクロン級ウィルスが2~3年に一度のペースで発生するという計算を示したこと(日経新聞記事)を批判しております。英国は科学的で日本はそうでない、英国のようにやるべきだ、というわけです。

シナリオプラニングと統計学

このアゴラエントリーを読んで、ちょっと待てよ、と思うのは、おそらくは私だけではないでしょう。

シナリオプラニングは、たしかに、起こるべきさまざまな事態に対して事前に準備するという目的からは有効な手法でしょう。しかし、資源配分を考える上では、確率的な視点も考えておかなくてはいけない。

まあただ、「2~3年に一度のペース」というのは、計算でも何でもない、過去がそうであったからという単純な話であるように思えます。つまり、平凡の原則といいますか、これまでに起こったことが、この先も起こるであろうという単純な予測なのですね。

これは、保険などで基礎となる考え方で、生命保険や火災保険などはこの考え方(過去の実績の延長での未来予測)で保険料を決めているわけです。ここで、人の死や火災は多数の事例が過去に発生しておりますので、かなり精密に未来を予測できるのですが、原発事故のような、めったに起こらない対象であっても、一応何件かの事故が起こっておれば、怪しいながらも未来は読める。原発事故にも、保険契約は成立しているのですね。ウイルスの変異も、全く未知の現象というわけでもありませんから、過去のコロナの変異実績でこのように述べることは間違いではない。

でも統計学がものをいうのはその先の話なのですね。新聞はわかりやすい部分を強調してしまうのですが、西浦氏の資料を見ても、どこを見て新聞がそのように書いたのか、なかなかつかめない。

4/6の厚労省アドバイザリーボードに提出された西浦氏の資料には、シナリオ分析も示されております。これ、各県のデータを羅列しておりましてものすごく長いのですが、127ページは以下に掲げるように、4つのシナリオで分析しているのですね。



もちろんこちらは、それぞれのシナリオで、感染者がどのように推移するかを計算するためのシナリオで、数字を出すためには数式が必要になり、それぞれのシナリオに対しては確率統計的手法が使われている。だから数値的な予測が成り立っております。

本当の問題の所在は

これを新聞が伝えても、果たして読者に理解してもらえるかははなはだ疑問で、だから新聞は簡単な話だけを伝えてしまうのでしょう。でも、実際に病床を準備したりするためには、感染者や重症患者の数の予測が必要になる。マスコミ受けしやすい部分だけを取り上げて議論するのは、少々フェアネスに欠けるように、私には思われます。

大局的視点に立てば、日本はスペシャリストに対するリスペクトが欠けているという事実があり、これがマスコミや評論家の姿勢にも表れているのでしょう。そして、このような風潮が我が国の優れた頭脳の海外流出も招いている、一つの原因であるのでしょう。

そういえば同じアゴラに「日本のスーパーヒーローはどうしてアホ設定なのか」という永江一石氏のエントリーがありました。米国映画のヒーローは天才科学者や大金持ちが多いのに、日本のヒーローは頭の悪い子が頑張ってヒーローになる。

そりゃ、そういう物語は夢があるかもしれないけれど、こと科学技術の微妙な世界になりますと、ただの努力友情根性でどうなるものでもない。きちんとした科学的・数学的知識の持ち主に考えてもらうしかないと、私は思うのですが、、、

1 thoughts on “シナリオプラニングと統計学

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