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民主党政権なかりせば

池田信夫氏の4/19日付アゴラ記事「円安って何?(アーカイブ記事)」へのコメントですが、先方が古い記事であるだけに、ブログ限定で書いておきます。


この池田氏のエントリーは、さすがに「こども版」であるだけにわかりやすい。と言いましても、果たしてこれがわかる子供がどの程度いるのでしょう。ほとんどいないとは思いますが、、、

まず、為替は何で決まるか、という疑問に対する答えが、「日米金利差」でして、日本がゼロ金利なので、結局は米国の金利で決まる、と。実際に、米10年債利回りとドル円は、下図のように見事に対応しております。まあ、利回り0.1%がドル円1円に対応しそうですね。

次に、円安への対応として日銀は金利を上げるかという問題ですけど、それは「できない」と。低金利国債を我が国の金融機関が大量に保有しているため、金利を上げると金融危機が起こることが第一の理由、そして、日銀に銀行が預けている預金が500兆円ほどあり、これに金利を付けると日銀が破綻するというのが第二の理由です。

輸出物価を輸入物価で割った比率を交易条件といい、これが低いと輸出品が高くならないのに輸入品だけが高くなり、日本は貧しくなる、悪い円安だと池田氏は書きます。でも、その原因まで考えますと、為替レート以外の理由で輸入価格が上昇した場合に交易条件が低くなるわけで、産油国の値上げだとか、今回のロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格上昇のような、世界的な物価の上昇がありますと、結果的に悪い円安と呼ばれることになる。これは、原因と結果が逆じゃないかと思うのですけどね。

つまり、輸入物価の上昇は、円安の結果ではなく、これとは別の原因で生じていて、そこに関係があるとすれば、エネルギー価格上昇により日本経済が悪化し、その結果として円安が生じた、ということではないかと思います。これへの対応としての円安是正など、意味がありません。必要なことは、景気対策でしょう。

交易条件がさほど悪化しない場合には、円安になると物価が上がるため国民は困るけど、大企業は輸出で儲かる。だから円安は「消費者から大企業への所得移転」であると池田氏は書きます。これは、そういう傾向はあるとしても、たとえばインバウンドについてみれば、儲かるのは大企業だけではなく、飲食店、交通機関、その他もろもろとなりますし、農業だって輸出をしているところは儲かるはずです。

池田氏は書いていないのですが、この部分での大問題が、民主党政権の時代に、輸出比率の高い我が国の製造業の国内生産が成り立たず、生産拠点を海外に移してしまったこと。

国内に工場があれば、円安になればこれがフル稼働して、従業員にも利益が出るし、周辺の納入業者にも利益が出る。そして税金も納めてもらえる。でも工場が海外にあるのでは、円安で大いに稼働率が上がっても、国内の労働者にはご利益がない。利益が出るのは、海外工場に勤務する外国人と、海外の工場を所有する日本の大企業ということになります。

これに関連して以前のブログにも書いたのですが、我が国の輸出入の差である貿易収支(下図の黄色い部分)は、2010年まではプラスだったのですが、2011年に突然減りだしております。その代わりに、外国投資に関するお金の出入りの差を表す所得収支が増えている。この時点で、工場が海外に出てしまったことは、こういった統計にもはっきりと表れているのですね。

製造業が国外に出てしまうと、日本サイドの利益は投資に対するリターンのドルが円評価すると大きくなるという点だけで、それこそ、会社はもうかるけれど、日本人従業員は分け前に与れない。ひどいことになりました。だれのせいやねん!(答えをタイトルに書いておきました。)

とはいえ、円安が続けば、海外に出て行った工場が日本に戻ってくる。そうして、日本の実力レベルの為替水準に落ち着くであろうというのが池田氏の予想です。この点は私も同じです。

為替水準が落ち着く点として、均衡為替レートで1ドル150円というのが池田氏の予想ですが、毎度のドル円長期チャートに基づく私の予想では200円前後かなあ、、、といったところ。まあ、このあたりの予想がぴたりとできるなら、誰でも大儲けできるのですが、なかなかそういうわけにはいかないのが現実の世の中。これは致し方ありません。

さて、放っておいてもいずれは解決するこの問題ですが、円安の過程で物価が上がるけども所得の増えない人は生活に困ることになります。ぜ~んぶ、はとかんのだが悪いのだ、と言ってみても何の救いにもなりません。そこで政治的な救済の道を考えなくてはいけません。

まずは、エネルギー価格の高騰に対しては、補助金を出すことで痛みを和らげます。製油会社に対しては今でもやっておりますが、電力会社、ガス会社だって同じこと。値上がりが許容レベルに収まるようにお金を出すしかありません。また、以前のブログでも述べましたが、世界最大の産油国であります米国政府に石油天然ガスの増産を働きかけ、必要なら、一定規模の長期購入契約を結んでもよいところです。米国民も、自国のエネルギー生産増加を期待しており、このような申し出では、先方も歓迎するのではないかと思います。

次に、三人組のおかげで国外に出てしまった工場を、国内に戻す手を打たなくてはいけません。これには、将来性があり、大きな利益が見込まれ、一定の雇用も生まれるような業種が欲しいわけで、先のブログにも書きましたような、EV用のキーパーツ、半導体工場、製薬拠点、巨大サーバ(データセンター)などがこれに該当しそうです。

また、この機会に次世代を担う研究開発に集中投資もしなくちゃいけない。これは、半導体製造設備などが過去にありましたけど、今日喫緊の課題であるエネルギー関連では、超電導、電力貯蔵、そして核融合発電などが重要な項目でしょう。超電導では効率的な冷凍機も必要ですし、核融合ではトリチウムの製造も考えておかなくてはいけません。このような新しい課題に関しては、いろいろな可能性を広く睨んで積極投資をしていくのが正解だと思いますよ。これらのテーマは、5~10年先には花開くはずのテーマであり、きちんと工程表を作ってスケジュール管理もしていかなくてはいけません。

あとは、観光(インバウンド)、農業、コンテンツ産業などに、あまり口を出さず、現場の足を引っ張らず、でもお金を出して現場の声に応じて規制緩和するなどの側面支援をしていく。これらは、目先に大きなお金になりそうな部門で、雇用も多くが期待できる。必要な人材が不足していたら、日本全国から広く募集すればよいのですね。また、これらの産業への情報技術の利用も期待されるところで、上で述べましたデータセンターとの連携もありそうです。

まあ、こういった産業振興策を矢継ぎ早に打って行けば、金利水準にさほどの手を付けずとも、輸出振興に伴う外貨の流入増が期待されれば、円安もそうそう極端には進まず、適当なレベルで為替も落ち着くのではないでしょうか。

まあ、そういった知恵を出すことが、この先の政府、官庁には求められているのだと思いますよ。もちろん政治家にもですから、国民の側もこの先の選挙では、くれぐれもミスらないようにしなくちゃいけません。

1 thoughts on “民主党政権なかりせば

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