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核融合2.0が拓く未来

松田智氏の8/20付けアゴラ記事「『気候変動の真実』から何を学ぶか⑤」へのコメントです。


エネルギー問題と温暖化問題の解決の方向は、ほとんど見えているように私には思われるのですが。つまり、核融合が2030年代に実用化され、2050年代までに一般化するというのがメインシナリオだと思うのですね。で、水を電気分解した水素と、これと炭酸ガスを反応させて作った燃料が、電力とともに利用されるようになる。

核融合の実用化時期は、ITERという国際協力プロジェクトが2050年代の実用化を目指して検討中なのですが、おそらくは、各国のスタートアップが進めている民間プロジェクトが先を越す。これらは2030年代の実用化を狙っており、ひとたび経済的に成立するとなりますと、急速に普及が進むはずです。

実際問題として、ITERがメインに考えているトリチウム燃料は、福島の問題を見ても、漏れた時の処理が大変になると予想され、トリチウムを使わない「核融合2.0」とでもいうべき技術で実用化がなされる公算が高いものとみております。D3Heか、DDか、p11Bか、、、最後のものは米国のTAEテクノロジーズの方式で、炉の方式は少々疑問があるのですが、反応や電力取り出し方式にユニークなものがあります。

核融合は、出力一定の運転が最も効率的ですので、電力エネルギー蓄積技術、燃料合成技術などが実用化に際して必要になります。多分、電気分解で水素を作り、これを用いて今日使用されている都市ガスや自動車燃料を合成することになるのでしょう。

ここで日本が乗り遅れますと、1990年代の情報革命への乗り遅れの二の舞となり、失われた40年が失われた100年になる運命が見えてまいります。頑張らなくてはいけません。


8/21:以下のコメントを追加しました。

上のコメントを書いてから、一つ、恐ろしい可能性に気付きましたので書いておきます。我が国はITERプロジェクトに巨額の国費を支出しているのですが、このプロジェクトが成功してITER方式の核融合を実用化しようとなった段階で、果たしてこれを国内に作ることができるのか、という問題です。

なにぶん、ITERはDT反応(重水素とトリチウムの核融合反応)を用いており、大量のトリチウムを扱うことが前提となります。このため、トリチウムを安全に扱う技術、濃縮分離する技術、漏れた時の回収技術なども前提となるのですが、我が国の公式見解は、これができないことになっているのですね。

トリチウムの分離回収技術に関しては、プラズマ・核融合学会誌2016年の小特集「トリチウム分離・濃縮技術」などを見ていただければわかりますように、現実には可能な技術であり、工業的にも行われている。しかしなぜか日本ではこれをできないとする見解が広がっている。

この情報化時代に、このような現実と異なる認識が広がっていることは、非常に不思議な現象であり、可能性として思い当たる一つ、「福島のトリチウム含有水を海洋放出するためには、トリチウム分離をできないことにしておかなくてはいけない」、であるとしたら、これは恐ろしくばかげた話です。

なにぶん、トリチウムの分離技術くらい、我が国でも化学を学んだ人や核エネルギーの専門家ならだれでも知っている。そもそも、原発が可能なのもウランの同位体分離が可能だからであって、こんなごまかしが世界に通るわけがない。こんなことをしていたら、我が国の言葉が信用を失ってしまうのですね。さらには、将来の核融合技術の利用にも支障をきたす。ここは早期に、路線修正が必要なところです。

1 thoughts on “核融合2.0が拓く未来

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