コンテンツへスキップ

相場を読む:2022&2023

毎年恒例の相場を読むです。なかなか難しい展開となっておりますが、振り返ってみればそこそこの結果と自負しております。とはいえ、本年の読みは「不透明」、これではあたったところでえばれません。


本年の反省

昨年の予想をいくつかチェックいたしましょう。

新形コロナに関しては、第6波の到来を予測しておりましたが、こんな予測はあたってあたり前。実際には、第6波から8波まで、三つも波が来てしまいました。そして、回を重ねるごとに感染者数も死者数も大きく増加しているのが大問題でした。

国際情勢に関しては、北朝鮮の問題が低下する一方で、中国の台湾進攻と、ロシアのウクライナ侵攻のリスクが高いと予測しておりました。その時期を、中国オリンピック後と予測したところまでは大当たりで、2/20の中国オリンピック終了からさほど日を経ない2/24に、ロシアがウクライナに侵攻いたしました。

こちらはすぐにロシア勝利で終わるかとも思われたのですが、ウクライナが予想外に健闘し、現在に至るまで決着はついておりません。それどころか、ウクライナ有利の展開であるようにも見えるのですね。

一方の中国による台湾進攻は、さすがの中国も、当初はロシアのウクライナ侵攻に対する様子見といった風情でしたが、その後は、コロナの深刻化と、ノーコロナ政策に対する国民の反発、更にはノーコロナを緩めたところでの感染爆発など、とても台湾進攻に踏み切れる状況ではありません。しかしこの問題もいずれ片付くはずで、その先がどうなるかは予断を許しません。

その他、相場がらみでの大きなニュースは、3月ごろより円安が進み、10/21には151円台のピークを付けたことが挙げられます。ところが日経平均はさほど動かず、26,000円から28,500円あたりの狭いレンジの動きに終始しております。これなら、放置でも正解か、といったところでしょう。

その他、予想外の出来事として、安倍氏暗殺がありました。これは、社会的には大問題で、旧統一教会に対する寄付などの規制をめぐる議論が一気に高まりましたが、相場への影響はあまり大きなものではありませんでした。

ハンセン氏による2023年の見通し

2023年がまた読みにくい年となっております。ただ、安田佐和子氏の12/14付けアゴラ記事「ビックリ10大予想の前に、こんなサプライズで頭の体操はいかが?」のおまけ的な「サクソバンクのヘッド・オブ・コモディティ・ストラテジーのオル・ハンセン氏が送る”奇抜な2023年見通し”」が面白い。以下この各項目について、論評を加えてみましょう。

1)エネルギー問題に1兆ドル規模の投資を行う億万長者連合が誕生:すでに、TAEテクノロジーズにビルゲイツ氏やグーグルが投資をしており、この動きが拡大するということでしょう。

TAEは、陽子(水素の原子核、プロトン)とホウ素11を反応させるもので、反応生成物がヘリウム原子核(α粒子)だけで、炉壁を傷める高エネルギー中性子を出さないという特徴があります。衝突型の反応炉は、容易に点火可能という特徴がある反面エネルギー効率が低そうで、これが問題になるかもしれません。TAEのすごい点は、普通ならロスになるシンクロトロン放射を積極的に利用して、放射されるマイクロ波をレクテナ(アンテナと整流器を組み合わせたデバイス)で直流電力に変換するというもの。これは、反応生成物が荷電粒子で、エネルギーがプラズマ内部にとどまるがゆえに可能となるのですね。DT反応では、生成するエネルギーの大部分を中性子が系外に取り去ってしまいます。普通に考えれば、荷電粒子生成反応が主流になりそうなものです。

問題は、反応に高い温度が必要で、だから衝突型の反応炉を用いているのでしょうが、たとえば重陽子(D)とヘリウム3の反応で生じる高エネルギー陽子を利用するなどすれば、トカマク型なりヘリカル型の炉でもP11B反応が起こせるのではないかと思います。まあ、こういった改良がこの先おこなわれて実用的な核融合炉ができていくのでしょう。ちなみに、TAEは我が国の磁場閉じ込め型核融合試験設備ともタイアップしており、このあたりを我が国が分担するとおもしろいことになりそうです。

その他、似たようなスタートアップにGeneral Fusionがあり、こちらはアマゾンの創始者ジェフ・ベゾス氏が後援しております。

2)マクロン仏大統領が辞任:こちらはパス

3)中央銀行がインフレ抑制に失敗し、金先物価格が3,000ドルまで過去最高値を更新へ:ヨーロッパは、エネルギー価格の高騰のため諸物価が上昇しておりますが、これは、ロシアの天然ガスが入ってこなくなったためで、どうしようもない。もともとイギリスは、北海油田というエネルギー資源を自前で持っていたのですが、地球温暖化防止のため、新規の採掘投資を手控えていたのですね。しかし、ロシアの資源が入ってこないなら仕方ない。北海油田への投資を再び行えばよいだけの話だと思います。

実は、油田、ガス田は、EOR、EGRという技術が使われており、炭酸ガスを地中に送り込んで増産を図るということも行われている。極端な話、抜いた天然ガスと同じ量の炭酸ガスを送り込むなら、炭酸ガス濃度の増減は生じない。これには、発生する炭酸ガスを集めて油田なりガス田に持ってくるという手間がかかり、それ相応の投資も必要になりますが、何もしなくてもガスが出ている間は、ガスやオイルを抜くだけで、炭酸ガスの注入はガスの出が悪くなってから、という手もあるのですね。

一般にインフレが問題となるのは、好景気で、多くの人がものを買うために、循環的に物価が上昇していく場合です。今回のように、エネルギー価格が上昇するだけであれば、むしろ不景気になり、人々は財布のひもを締めるはず。たしかにオイルが上がれば物価は上昇するけれど、それは限定的で、なかなか全面的なインフレにはならないのではないでしょうか。

4)EU軍の創設:これはパス

5)2030年までに全ての食肉生産を禁止する国現る:これもパス

6)英国がBrexitを巻き戻しEUに復帰する”UnBrexit”の国民投票を実施:これはあるかもしれません。元々、北アイルランドとスコットランドは、英国から分離独立する意図があり、特に英国の経済的苦境の影響を受けると独立機運が高まる。これを押さえるためには、英国のEU復帰という奥の手に出る可能性は多分にあります。

7)物価上昇抑制のための価格統制が広範に導入へ:これはどうでしょう。とはいえ、パス。

8)中国、インド、OPECプラスがIMFを脱退、新たな準備資産で取引することに合意:こちらはありそうにありません。

9)ドル円は200円へ上昇、200円を下限とした管理相場制を導入:この可能性は多分にあります。日本が国際競争力を回復する、何らかの革新がなされなければ、日本は発展途上国化するしかなく、現在の為替水準は円が強すぎる。おそらくは150-200円/ドルの水準が妥当ではないかと思います。

日本が国際競争力を回復するきっかけとしてありそうなものは、一つには、高温超電導材料の実用化に成功し、電力給配電や、船舶やEVなどのモータ、発電機などの分野への利用が進むこと、もう一つは、核融合の分野で画期的な進歩に貢献することなどがありそうなところです。その他、雇用改革が成り、国内のビジネスに適切な情報化がなされること。これは、他国に遅れをとること30年ですが、そうであればより効率的な導入も可能というものです。

10)OECDが租税回避の禁止を決定、プライベート・エクイティが消滅:この手の租税回避の動きは押さえる方向に向かうでしょう。日本も、マイナンバー制度導入の本丸的目的は、金融資産からの収入を給与と一体で課税対象とするところにあったはず。これが成れば、実質的な増税となり、政府の歳入不足は一気に片が付くはずなのですね。

2023年の予想

2023年の動向を左右する、いくつかの大きなポイントがあります。一つは、ウクライナの戦争がどのように展開するかという点で、何らかの形でプーチン氏が除去されるか、あるいはロシア不利の形で休戦協定を結ぶしかないのではないかと思います。ロシア側の領土返還と、ウクライナ側の賠償放棄といったところでしょうか。この返還される領土にクリミアを含むかどうかが大問題ですが、含まない、という形であればロシア側も譲歩がしやすい。これが年明け早々の動きになるのではないかとみております。

この問題が片付けば、ロシア産ガスの輸出も再開され、ヨーロッパのインフレも片付く。一方、米国のインフレは、ウクライナ問題以前から始まっており、こちらはGAFA絶好調という景気の良さゆえのインフレであるなら、金利引き上げなどの経済を冷やす対応をせざるを得ないでしょう。そうなりますと、再び円安の動きが出る可能性が高い。ドル円に関するハンセン氏の予想は、良いところをついているのではないかと思います。

株式市場につきましては、まだまだ上がる要素はあまりない。これで円安が定着し、製造業の国内回帰が進み、物価上昇がピッチを上げてまいりますと、株価も上がるのでしょうが、当面はおっかなびっくりといった展開になるのではないかとみております。コロナの問題もまだ当分は片付きそうにありませんし。

もう一つのインパクトとして、技術的な大進歩がありますと、景気も一気に上向く可能性がある。これは、一つには超電導技術の広がりと、もう一つは核融合実用化の見通しが開けてくることで、実体はまだまだ先であるにしても、道筋のアナウンスがどこかでなされるのではないかと期待しております。まあ、その可能性はさほど高くはないのですが、夢は持っておきたいのですね。

悪い側の出来事としては、中国による台湾進攻でして、これが起こりますと我が国のみならず世界の産業が大混乱に陥ります。つまり、半導体の品不足が生じる。すでにこれをにらんだ動きはあるのですが、準備は全然足りてません。

もう一つのあり得る悪い側の出来事として、コロナ禍の深刻化です。現在の第8波も、致死率が7波に比べて上がっており、新型コロナは必ずしも弱毒化に向かっているということはありませんでした。中国では既に大規模な感染拡大が起こっており、それにもかかわらず、海外旅行の規制も緩める方向にあります。我が国のコロナ感染拡大は、かなり高い確率であるものと覚悟せざるを得ません。この場合に、経済へのダメージも当然生じるわけで、その程度の軽重が懸念されます。

まとめ

と、いうわけで、良い側の予想もあれば懸念事項もある2023年でして、振れ幅は大きく、どこに落ち着くかがなかなか読みにくい状況となっております。とはいえ、メインシナリオとしては、さほど良くもなく、悪くもなく、といったところではないでしょうか。

つまるところ、いろいろな問題は生じるであろうけど、何とかこれを乗り切る一年になるのではないか、ということですね。来年を終わってみれば、2022年と大して変わらない一年だった、などという感想を書くことになるのではないか、と予想しております。

1 thoughts on “相場を読む:2022&2023

コメントは停止中です。