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貿易収支の赤字は似ているが

池田信夫氏の7/28付けアゴラ記事「日銀の『一国マネタリズム』は終わり、空洞化の時代が始まる」へのコメントです。


日銀と財務省の打っている手が逆というのは確かにそうでしょう。でもそれは、日銀が間違っているのか、財務省が間違っているのかのどちらか、というのが普通の考え方でしょう。

このエントリーの最後に近いところに「国際収支の推移(財務省)」と題するグラフが掲げられています。この中で、2022年の貿易収支が急激に低下している。同様の現象は、2012年から2014年にかけても生じており、この時の大問題が「空洞化」であったことから、池田氏は「空洞化の時代が始まる」との表題を付けられたと思います。でも、この二つの時期の貿易収支低下の原因は全く異なるのですね。

2012年から2014年にかけて生じた貿易収支の低下は、生産工場の海外逃避によって生じたもので、「空洞化」そのものです。これは、1ドル80円を割り込む極端な円高により国内工場が競争力を失ったが故に生じたもので、更にその原因をたどれば、他国の金融緩和政策をしり目に、我が国は行動が遅れたことによります。

一方、2022年の貿易収支低下の原因はエネルギー価格の高騰によるもので、ロシアのウクライナ侵攻に端を発している。その結果、ある程度のインフレ傾向に至ることはやむを得ないことなのですね。

日銀と財務省の政策のすり合わせが重要であることは言われる通りですが、表面に現れた現象(貿易収支の数字)だけを見て議論することは、間違いを犯す可能性も高い。ここはその底にある原因までを含めた、注意深い検討が必要とされる局面です。


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