コンテンツへスキップ

日本リスクの根本原因「円高」

池田信夫氏の11/14付けアゴラ記事「超円安を招く日本の『カントリーリスク』」へのコメントです。


経常収支=貿易収支だったときは話は単純で、輸出が増えれば外貨が入り、それで円を買うので、経常収支が黒字になると円は強くなる。ところが2010年代以降、経常収支は黒字なのに円安が続いている。
その原因は、経常黒字の原因が貿易収支ではなく、第1次所得収支だからである。これは海外法人の利益で、企業会計上は本社の連結経常利益に計上されるが、アジア法人の場合、法人税率は10~20%だから、日本に配当や利子を送金して法人税を取られるより、現地で再投資したほうがいい。

正確に言えば、2010年代の前半に貿易収支はこれまでの黒字基調から大幅な赤字に向かい、2010年代の後半にトントン程度まで戻した。一方、所得収支は2000年ごろからじわじわ上昇し、2010年代の後半にこの傾向を強めた結果、経常収支は黒字を続けている、ということですね。

2010年代の前半に貿易収支が一転赤字基調を強めたのは、民主党政権下での極端な円高により、国内の生産工場が海外に移転してしまったからなのですね。海外の工場で生産が継続した結果、所得収支は黒字を拡大している。国内にキャッシュが還流していないわけではありません。でも、国内には投資機会に乏しく、国内の生産は増加しない。GDPは上がらないし、国民の給与も上がりようがない。

この空洞化が始まったのは、民主党政権時代は極端だったけど、じつは2000年ごろからじわじわと進んでいる。結局、1ドル100-120円も日本の実力からみたら、少々円高に過ぎたわけですね。ここは、適正レベル(150-180?)に戻し、国内の生産を確保することが、日本の国力も上がるし、現役世代の給与を確保する上でも重要なポイントだと思います。

経常収支の黒字は所得収支に支えられており、所得収支の黒字は技術的な強さに支えられている。しかしこの強さは何時までももつものではない。特に国外に生産工場があり、外国人労働者がノウハウを吸収していることは、この強みが失われるのも時間の問題と思わなくてはいけない。それまでに、適正な為替水準に戻し、国内に生産拠点を戻すこと。これが今後の重要課題ではないでしょうか。


1 thoughts on “日本リスクの根本原因「円高」

コメントは停止中です。