岡本裕明氏の1/13付けアゴラ記事「物価高の主因、労働生産性の改善を」へのコメントです。
何度か述べてきたことの繰り返しになりますが、【1995年以来就業者一人当たりの付加価値額が全然伸びていない】原因は二つ。一つは奇しくも1995年がインターネット元年と呼ばれているように、1990年ころより、パーソナルコンピュータの性能が格段に向上し、95年ごろからはインターネットが使われるようになったのですね。
この「情報革命」は、ホワイトカラーの効率を桁違いに改善し、ビジネスのあり方を変える力を持っておりました。ところがわが国の指導的立場にある人たちにはこれがわからず、旧態依然としたやり方が続いてしまったのですね。この手の農村的長老支配的社会構造が我が国の一つの遅れた部分だし、それが情報革命に乗り損なう原因となりました。
もう一つは、1985年のプラザ合意後、為替の円高が急速に進んだこと。実力からは1ドル165円程度と考えられていたにもかかわらず、1ドル150円を切る行き過ぎた円高が生じ、さすがにこれはまずいと1987年2月にパリのルーブル宮殿で過度なドル安を是正しようとのルーブル合意がなされたのですが、ドル安は是正されなかったのですね。
その結果起こったことが、生産工場の国外移転で、日本のGDPから特に生産性の高い部分が欠落する。また「円高不況」に対応する低金利がバブルを招き、これを是正してなお深刻化する不況に対して、国債の大量発行による公共投資をおこなったのですね。これが1990年代から急激に国債発行残高が増加した理由です。さすがにこれはまずいと、小泉改革が行われたのですが、バブル後の金融危機のしりぬぐいには成功したものの、日本の旧態依然とした体質の改善はほとんど進まず、今に至っております。
基本的には、稼げないなら使っちゃいけない。稼ぎに応じた生活を心がけるしかなく、無理に給与を上げるなら物価高でバランスをとるしかない。その簡単な一手が、為替の円安で、この作戦はひそかに進行中と、私は睨んでおります。岸田さん、隅に置けないのですね。それが嫌なら、技術革新で生産性を高めること。結局のところ、我が国の働き手の意識改革から始めるしかなさそうです。
生産性