アゴラ編集部の7/20付けアゴラ記事「豊田章男会長が日本脱出を考えているのは朝日新聞の切り取りが酷すぎるせい?」へのコメントです。
朝日新聞がどんな記事を書いたところで、それでトヨタの経営方針が変わるわけなどないでしょう。
我が国の自動車産業の海外逃避は今に始まったことではなく、1985年のプラザ合意以来の行き過ぎた円高が一つの要因ですし、その他の日本の社会制度(法人税の高さ、終身雇用に代表される雇用慣行、官公庁対応の煩雑さ、などなど)も他の要因としてあげられるでしょう。まあしかし、そういう悪条件の中で、自動車生産台数のきっちり1/3を国内で生産しているトヨタの姿勢には、頭が下がるばかりなのですね。
今回の問題は、おそらくは、国交省の対応のまずさで、我が国の大手マスメディアが省庁と癒着しておりますことは魚住昭氏の著書「官僚とメディア」(本ブログでもご紹介)あたりを読んでいただけばわかる通りで、やり玉にあげられた者にしてみればたまったものではない、ということでしょう。これはこれで、我が国の産業の足を引っ張る要素であり、マスメディアのあり方を含めて、この先、まともな形に変えなくてはいけない点でしょう。
日本の官公庁の悪しき伝統に「形式主義」があり、たとえば会計原則でも「形式を実質に優先させる」傾向があるのですね。これは、国際会計基準の「実質は形式に優先する」と180度異なる行き方です。まあ、検査などで実質を判断するためには、工学的知識も要求され、お役所が文系人間ばかりであればこれは困難なのでしょう。でもそれって、宗教の原理主義みたいな、聖典の一字一句をありがたがるやり方と同じで、進歩がないのですね。
というわけで、いろいろと変えていかなければいけない点が多々あることも事実。だけど、最大の問題は円高にあったということは意識しておいた方が良いと思います。ただ、円高を是正しただけでは、日本人の暮らしが向上しない。であるがゆえに、社会のあらゆる部分を時代に合わせた合理的な形に変えていかなくてはいけない、ということなのですね。
ますごみ