増田悦佐氏の8/16付けアゴラ記事「日本はこれからどうなるのか?」へのコメントです。
長文エントリーで突っ込みどころも多々あるのですが、コメントはそうそう書けませんのでいくつかのポイントを指摘しておきます。
まず「労働生産性・実質賃金推移の国際比較1995~2020年(1995年を100とする指数表示)」って、ここ、笑うところですよね。ここで大笑いしない人は、日本経済を語る資格はありません。1995年は、じつはドル円が79円70銭台の史上最高値(円高)を更新した年なのですね。
この意味は、ドルベースでの日本人の賃金は世界最高水準に到達した。こんな賃金では輸出産業は成り立たず、国内企業の海外逃避が相次ぎ、国内の雇用は失われ、就職氷河期と相成ったわけ。円高不況とバブル崩壊後の不景気のダブルパンチの時期に、我が国の働き手は我が世の春を満喫しておりました。
こんな不自然な状況がそうそう長続きできる訳もなく、我が国は失われた30年と呼ばれる低成長期に突入したのですね。一方で内需拡大のために国債発行残高を積み上げて円高不況対策を講じたのですが、円高自体は修正されない。
これがやっと修正されたのが昨年のドル円150円台復帰で、これが本年まで続いたおかげで、国内企業の業績が上向いてきたというわけです。この事実を端的に語るのが、企業業績で、株価と利回り、PERを見てやれば、日本経済の今がどうなっているかよくわかるはずです。
このページあたりが、およそ妥当な各国比較かもしれません。
賃金はこちら。図を下にコピーしました。1995年の日本の賃金は、ドイツにわずかに負けていますけど、ほぼ世界トップレベルであったことは確かでしょう。しかし、他国の賃金が上昇する一方で、我が国の賃金はほとんど増えることなく、2020年になるとかなり下位の賃金レベルとなってしまいます。(2011 -12年の上昇は、民主党政権時代の異常な円高によるもので、1995年と同様、実力を反映したものではありません。)
この原因は、電機・電子・自動車といった生産性の高い産業が海外に出て行ってしまい、サービス業などの低生産性産業の比率が国内で高まったこと、GAFAに代表される情報電子産業をけん引役として賃金伸びを実現した米国に対して、我が国の情報化への取り組みが今一歩であったことなどがあげられます。
ながい