池田信夫氏の8/16付けアゴラ記事「次の自民党総裁はアベノミクスを転換できるのか」へのコメントです。
その原因は、皮肉なことにアベノミクスの促進した産業空洞化だった。黒田日銀が2013年から大量にばらまいたマネーのほとんどは海外投資され、その収益は半分しか国内に還元されていないのだ。
池田氏はかねてより「アベノミクスが産業空洞化を促進した」との主張をされてますが、これは、一般的な認識と異なると指摘しておきます。産業空洞化は、民主党政権時代の(1ドル80円を切る)異常な円高によって促進され、アベノミクスによって元の水準に戻った結果、産業空洞化の動きは止まった、とするのが普通です。
ここで、工場の海外移転は、為替の円高から一定の遅れを持って生じること、一旦海外に出た工場は為替が元に戻っても、国内に簡単には回帰しない、という点にも注意が必要です。また、企業が海外に生産拠点を移すということは、これをもとに海外投資がしやすくなる、という事情もあり、空洞化はそれ自体を加速する作用もあるのでしょう。
なお、アベノミクスで1ドル80円を切る円高が解消されたといっても、1ドル120円あたりに戻しただけで、1985年ごろに妥当と考えられていた165円付近からは、行き過ぎた円高であることに変わりなく、他の社会的なマイナス要因とも相まって、国内への投資は抑制される。これが、企業の海外への積極投資の理由なのですね。
また「日銀が大量にばらまいたマネーのほとんど」は、金融機関のもつ国債の買い入れという形で行われ、金融機関の得たキャッシュは日銀当座預金という形になりました。日銀と金融機関の間で、「日本国債と当座預金残高の交換」が行われたというのが実情でしょう。これもマネーサプライの増加という意味で、異次元金融緩和が無駄であったということにはならないのですが。
あべ