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観光も良いが工業ほどじゃない

永江一石氏の12/12付けアゴラ記事「インバウンドで成功している県、大失敗している県を分析する」へのコメントです。


インバウンドは、たしかに産業として無視できない比重を占めております。また、日本には歴史文化や自然などで多くの優れた観光資源がありますし、安全で清潔な社会というのも、訪れる人の満足感を高める。今後ともこの分野は強化すべきであることは確かです。

このエントリーは、観光業が稼げるとしており、たしかに一部の観光地では給与が上がっており、他の観光地も工夫次第でより稼げるようになることも事実でしょう。しかし、ベースとして、観光業は他の産業分野と比較して給与水準が低いのが現実なのですね。

たとえば「令和5年版観光白書について(概要版)」という文書を観光庁が発表していますけど、14頁左下の一人当たり生産性で比較して、日本は全産業の806万円に対して観光などが491万円、宿泊が534万円と、6割程度しか稼げていない。その右が一人当たりの雇用者報酬ですけど、全産業の472万円に対して253万円、237万円と、こちらは半分くらいしかない。https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001613735.pdf

この傾向は他国も同様で、結局のところこの手の客商売は労働集約型の産業で、多数の雇用を生み出すのは良いのですけど、一人当たりの稼ぎはさほど上がらないのですね。だから、観光業があることは、多くの国民にとって助けにはなるけれど、それで国全体が豊かになるわけではない。やはりここは、科学技術を振興して工業分野で稼ぐのが一番効率的なのですね。

かつてギリシャが債務危機に至った時、ギリシャ経済の弱さを象徴する言葉は「観光以外にロクな産業がない」でした。観光はあるに越したことはないのですが、「ロクな産業」の方も、しっかり育てていかなくてはいけない。これは、ギリシャ危機の教訓といえるかもしれません。

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