中村仁氏の2/4付けアゴラ記事「批判を浴びる黒田・前日銀総裁は沈黙を破ってほしい」へのコメントです。
国内の通貨供給量を増やせば、物価が上がる(貨幣数量説)を当初、唱えていました。物価上昇が始まったのはウクライナ戦争、一次産品の値上がり、円安という外的要因でした。国内だけをみていた異次元緩和策は大筋で効かなかったと、黒田氏は認めることになります。
円高より円安がプラスということも就任時には語っていません。異次元金融緩和は円安を意図していないと、日銀は弁明していました。つまり「意図していない円安=インフレ輸入」が物価を押し上げていたわけで、「通貨供給量2倍、物価上昇率2%、2年」は目標と手段の設定が間違っていたことになります。
「為替操作は悪」というのが世界の常識で、日銀が為替目標を語ったりすることはできないのですね。「1ドル120円を目標にします」などと語れない以上「物価上昇率2%を目指す」などと語るしかありません。まあ、円安になれば物価も上がる、連動の関係がありますので、どちらを目標としてもさほど変わりません。
黒田氏が日銀総裁に就任した時点では、欧米が大規模金融緩和する一方で我が国がこれに出遅れたが故の、極端な円高(1ドル80円割れ)となっておりました。この結果、多くの工場が海外に逃避する『空洞化現象』が発生し、国内雇用の喪失という問題も生じていたのですね。日銀の大規模金乳緩和の結果、極端な円高は解消して、空洞化の進行も停止した。これは事実です。
その他、政府の国債発行と、日銀の国際保有は全然別の話ですので混同してはいけません。量的金融緩和はマネーサプライの増加を意味しますが、日銀券発行残高は貸借対照表の負債側に載りますので、これにバランスする資産が必要です。国債の形で資産を積み上げることは、何らおかしな話ではありません。
ただ問題は、供給したマネーが当座預金の形で日銀に還流し、これがマネーサプライにカウントされることは良いのですが、インフレが進んだ際にこれが引き出され、大量のキャッシュが市場に供給されることになる。その回収に国債の大量売却は困難で、市場を冷やす他の手段(増税など)が必要になる。そう考えれば、国債以外の手段で資産を保有することも有効かもしれないのですが。