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問題は適正なドル円レベルだが

中村仁氏の4/20付けアゴラ記事「日米交渉が示すトランプ流の装った無知と日本の弱点」へのコメントです。


異次元金融緩和は脱デフレのためであり、意図的な円安誘導はしていないとの説明です。

それは虚偽に近い説明でした。アベノミクスの当初のスローガンは「2年、2%の物価上昇、通貨供給量2倍」で、つまり2年で2%の消費者物価上昇を実現し、デフレを脱却するとの公約でした。いつまでたっても、実現はせず、アベノミクスは次第に「円安、財政ファイナンス(国債購入)」が本当の目的になっていったというのが反アベノミクス派の通説です。

アベノミクス以前の民主党政権時代(あるいは、白川日銀総裁時代)のドル円は、1ドル70円台の異常な円高が2年ほど続いていたのですね。この最大の問題は、国内の輸出産業が成り立たず、生産工場の海外逃避が相次ぐ「空洞化現象」でしたが、物価も確かに低下した。デフレであったことは間違いありません。

この円高は、リーマンショックによる世界的な経済縮小に対して、欧米諸国が「大規模金融緩和」に踏み切る一方で、我が国の対応が遅れたことで、安倍政権下、黒田日銀総裁になって我が国も量的金融緩和に踏み切ったのですね。これが日銀による国債の大規模買い入れ(と、これに伴う通貨の供給)でした。これは政府に資金を提供する「財政ファイナンス」ではなく、あくまで市場にキャッシュを供給する「異次元金融緩和」だったのですね。

で、アベノミクスの狙いは、もちろんデフレ脱却ではあったのですが、もう一つの口にできない目的が「極端な円高からの脱却」であったことはあたりまえの話です。なにぶん、1ドル80円を切るような円高が、デフレ以外にも、産業空洞化など、諸悪の根源でしたから。でも、為替操作はご法度という国際的なお約束故、これは口にはできない。あくまでデフレ脱却が目的で押し通す、これしかないわけです。

適正なドル円がどの程度か、という点は、今後を占う大きなポイントで、リーマンショック以前の1ドル120円あたりが一つの目安となるかもしれませんが、これでは失われた30年が続くだけ。このレベルの前提は、我が国の諸制度を改革して効率化を図ることでしょう。従来型の組織であれば、プラザ合意時点の165円/$なり、ルーブル合意で意識された150円/$が目安となる。これはたまたま現在のレベルなのですが、この水準で国際的理解を得ることは難しそうで、日本の効率化も避けては通れないように思われる次第です。

1 thoughts on “問題は適正なドル円レベルだが

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