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見直される、成熟しない重要性

與那覇潤氏の5/30付けアゴラ記事「父にならず『持ちこたえる』ことが成熟である」へのコメントです。


父にせよ母にせよ、これが「ゴールだ!」という価値観を掲げすぎると、それをいますぐ寄越せ・取り戻せ・邪魔するやつは殺せ……みたいになりがちだ。江藤淳よりも加藤典洋の方に、そんな事態を避ける知恵=「成熟」への萌芽があったとしたら、やっぱり1970年前後の学生運動に本気で没入して、その末路を知っているからだと思う。

この文章はちょっと矛盾しているように思われます。「ゴールに至ること」がつまりは「成熟」ですから。他のエントリーへのコメントでご紹介したリンダ・グラットンとアンドリュー・スコットの「ライフ・シフト/100年時代の人生戦略」では、成熟しない重要性に触れて「ネオテニー(幼形成熟)」という言葉を紹介しています。https://agora-web.jp/archives/250522233438.html

ただし、若々しく生きる期間が長くなるというのは、思春期が長期化するというだけの話ではない。あらゆる年代の人がもっと若々しく生きるようになる可能性もある。新しく出現する人生のステージがそれを後押しするだろう。100年ライフで多くのステージといくつもの移行を経験するようになれば、柔軟性が不可欠な資質になる。思春期の特徴を大人になっても保持し続けることの価値が増すのだ。そのように動物が幼体の性質を残したまま成体になることを、進化生物学では「ネオテニー(幼形成熟)」と呼ぶ。(P.226)

ネオテニーとは、一般に体のどこかに幼い部分を残したまま性的には成熟することで、人はチンパンジーのネオテニーであるなどという極論も唱えられたことがあると。頑張って成熟したらチンパンジーになっちゃったというのはカワイソすぎますが、この説を頭から信じる必要はなさそうです。https://ja.wikipedia.org/wiki/ネオテニー

ネオテニーの逆の概念の言葉に「過剰適応」があり、今日では周囲に合わせ過ぎた結果の精神的問題に対して多く用いられますが、巨大隕石説が出る前の恐竜の絶滅理由(環境に適応して進化した結果、大きくなり過ぎた)や経営問題(デフレに適応しすぎて成長できなくなった)などでも使われます。後者は現在の日本の抱える問題でもありそうで、ネオテニーがその解となりそうです。

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