中村仁氏の7/19付けアゴラ記事「外部委員の懸念を軽視した異次元金融緩和策のミス」へのコメントです。
日銀の国債保有は巨額(545兆円)に達し、植田総裁が金融正常化にもがいています。正常化できるとしても、2,30年先だろうとの見方もなされています。トランプ関税で物価は上がり、景気は停滞するかもしれない。日銀は金利を上げたくても、上げられない。
日銀の巨額な国債保有を問題視する人は多いのですが、基本的に、中央銀行は紙幣発行残高に対応する資産を保有しなくてはいけません。その資産として、国債は非常に都合が良いのですね。なにぶん、国が発行している債券ですから、安全性が高く、これが不渡りになるときは、中央銀行も破綻するとき。運命共同体なのですね。
そういうわけですから、国債保有が膨れ上がった背景には巨額のマネー供給(量的緩和)がありました。リーマンショック後の欧米の量的緩和(QE2)の動きに出遅れた結果生じた異常な円高への対応として、我が国も遅ればせながら異次元金融緩和に踏み切ったわけです。それが巨額になったのは、対応が遅れたためではないかと思いますが、正確なところはよくわかりません。
結局、10年経っても、大規模緩和策によるデフレ脱却の効果はなく、物価が上がり始めたのは、新型コロナウイルスによる経済・社会的混乱、ロシアによるウクライナ侵略などの外的要因のためです。
これはその通り。金融緩和により景気が上向き、消費や投資が活発となった結果の物価高なら金融緩和を止める理由になるのですが、外的要因のための物価高に対しては、金融引き締めによる抑制効果は逆効果。自国通貨高による輸入物価抑制という効果はあるのですが、これは極めて危険な経済政策で、タイやアルゼンチンの経済危機は、みな自国通貨高政策がその原因となっているのですね。言論人には、このあたりの経済の常識というものを、きちんとわきまえていただきたいものです。
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