高橋克己氏の7/23付けアゴラ記事「自民党は石破氏を降ろし、安倍路線を踏襲する挙党体制を築け」へのコメントです。
経産官僚も岸田官邸も、このディールの本質への理解が足りなかったのではなかったか。つまり、日鉄によるUSS買収が、米国にどれほど大きな恩恵をもたらすのか、ということに対する理解、というより「確信」を持っていなかったのではないか、という疑念が筆者にはある。が、幸いにも民間企業の日鉄はその「確信」に満ちていた。そしてディールは成った。
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関税交渉に係る米国の布陣を見れば、トランプ大統領以下、ベッセント財務長官もラトニック商務長官も、ついこの間まで民間で巨万の富を築いていた実業家だ。そういう人物らを相手に、石破氏や官僚上がりの赤沢氏が太刀打ちできるはずがない。だから、当初から「安保」と「USS買収」を切り離す、などという「あんぽんたん」をやってしまう。
ここがポイントですね。米国の自動車産業を守ろうと考えたら、自動車産業が使う材料ついても配慮しなくてはいけない。つまり、優れた鋼材を安価に手に入れる道をつけておかなくてはいけないのですね。
実は、最近の自動車には「ハイテン」と呼ばれる引張強度がダントツに高い鋼材が使われている。これがあるから、軽くて燃費の良い車が作れるのですね。そしてこの技術で、日本は世界に先行しております。
一部に、「米国鉄鋼メーカはハイテンを作れない」との見解がありますが、これは誤解で、USS傘下のプロテック社などはハイテンを生産している。同社は、神戸製鋼の技術指導の下に立ち上げた会社です。その設立自体は10年以上過去の話で、すでに基本はマスターしていると思いますが、技術は日進月歩ですから、日本メーカとの良い関係を引き続き保ったほうがよい。日鉄のUSS買収など、渡りに船だと思います。
敵を知り己を知れば百戦危うからずといいます。こうした交渉をする際は、業界の構造、それぞれの経営資源、技術力、保有する特許などを解析し、どういう手段がとりえるかを解析しなくてはいけない。これ、自分でできなければ外部のコンサルに依頼する手もある。そういうやり方なり必然性などすらわからないというのが、現在の日本政府の悲しい現実なのでしょうね。