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エネルギーの遠い未来に備える

室中善博氏の8/1付けアゴラ記事「化石燃料は、風力・太陽光では置き換えられない!」へのコメントです。


化石燃料は、石油天然ガスが約50年後、石炭ウランがおよそ130年後には枯渇する計算です。この計算は、現在の埋蔵量と現在の消費量を前提としており、この先新たな資源が発見される可能性もありますが、発展途上国の工業化が進むとエネルギー需要も爆発的に増大する可能性もあります。

つまり、このエントリーの論が成り立つのは、この先数十年程度。20~50年先になりますと、別の技術が要求される。技術開発に要する時間も考えますと、この道も、今から考えておく必要があるといえるでしょう。具体的には、核燃料を格段に長持ちさせることができる「高速炉」と、資源に制約がほとんどない「核融合」の実用化を急がなくてはいけません。

核融合に関しては、各国が多数のプロジェクトを走らせ2030年代の実用化を目指しております。我が国も国際協力の元、ITERの開発に参加しているのですが、問題はトリチウム(T)を使用すること。福島でも問題になりましたが、果たしてわが国でTを大量に使用する核融合発電所が立地できるかは、大いに疑問です。一方、Tの代わりに3Heを用いるプロセスもあり得、こちらは反応で中性子が生成しないため炉を傷めないという特徴があります。3Heは月面にしかないという説も流布しているのですが、実はTを置いておけば、年間6%ほどが3Heに変化するのですね。

3Heは希釈冷却という技術で極低温を作るためにも使われ、今後、量子コンピュータが利用されるようになりますと需要も増加する可能性があります。この原料となるTは、中性子をLiに照射することで作ることができるのですが、高速中性子を用いますとさらに効率的になり、高速炉は格好の手段となります。我が国には高速炉の原型である「常陽」が、依然として高速中性子照射能力を持ち、3Heの製造にも利用できそうです。

通常の原子炉は天然ウラン(U)に1%以下しか含まれない235Uしか利用できないのですが、高速炉は天然ウランのすべてを燃料にでき、資源面での制約を大幅に緩和します。それ以外にも、放射性廃棄物中のプルトニウムも燃料にでき、これを無害化するための貯蔵期間を大幅に短縮できるほか、3Heの製造にも使える。もんじゅでとん挫しております高速炉ですが、この技術もぜひものにしていただきたいものです。

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