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高速炉と核融合が未来を拓く鍵

櫻井三紀夫氏の12/4付けアゴラ記事「核のゴミ vs 資源枯渇:将来世代により重い『ツケ』はどちらか」へのコメントです。


いくつかのポイントを指摘しておきます。第一に、ウラン資源の枯渇時期は、石炭とほぼ同程度の、百年余りと考えられており、石炭の枯渇を心配するなら、ウランの枯渇も心配しなくてはいけないということ。具体的には、高速増殖炉を実用化するか、核融合へと移行する必要があります。

高速増殖炉は、核分裂しにくいウラン238を核分裂するプルトニウム239に変換するほか、トリウムなども燃料とすることができ、燃料枯渇の心配を事実上ゼロにできるほか、使用済み核燃料の無害化に要する時間を10万年から300年に短縮できるといわれております。一方の核融合は、海水中に大量に含まれる重水素やリチウムを燃料とすることができ、資源的な制約はほとんどなく、放射性廃棄物もほとんど出ないという利点があります。

炭素資源に関しては、化石燃料以外にも、空気中の炭酸ガスを固定する植物から得る方法や、空気中、海水中の炭酸ガスを回収する方法もあり得ます。植物資源は、木材、紙、食料として今日でも大量に使用されており、その多くは、最終的に焼却処分されている。この燃焼排ガスから炭酸ガスを回収するというのが最も容易な大気中炭酸ガスの利用方法となりそうです。

核融合を含む原子力発電は、燃料コストの比率が10%以下と小さく、フル運転が有利となる一方で、電力需要には波があります。また、故障などに備えて予備の電源も必要になる。常時、フル運転を行い、余剰電力を利用して水電解して水素ガスを得、これと回収炭酸ガスからメタンを合成するというのが合理的なプロセスになりそうです。

メタンは都市ガスとして利用するほか、LNGとして都市に近い火力発電所で燃料としてもよい。また、エタノールを合成することもでき、こちらは、自動車燃料にもなりますし、エチレンに転化することもできる。こうしたプロセスを利用すれば、天然ガスや石油が枯渇しても、あまり問題にはならない。その出発点である、高速増殖炉や核融合の開発こそが、未来を拓くカギとなりそうです。

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