ネット上での喧嘩や、匿名投稿を悪用した問題あるメッセージについては以前のこのブログでも紹介しました。
これ、掲示板の利用者にとっては迷惑この上ないものなんですが、掲示板を利用する人たちの意識や文化を解析する上では、問題のある投稿や、それに対する反応、紛糾した議論、等などが実に役に立つんですね。この応用例については、HPの「悲しきネットワーク」をお読みください。
シナリオの書き方を解説した本に、“リトマス”なんていう、一種のテクニックが紹介されています。魅力あるシナリオは、登場人物の性格や考え方が、わかりやすく表現されてなくちゃいけない、そのためには、何らかの事件を起こし、それに対する反応によって、個々の性格などを描写する、そんな事件を“リトマス”と、その本の著者は呼んでいたわけです。酸性か、アルカリ性かを調べるのに使う、「リトマス試験紙」に例えたネーミングですね。
ネット上で起こるさまざまな問題も、ある種のリトマスではあるんです。
ただ、ヤフーのファイナンス掲示板で生じている紛争(コンフリクト)は、あまり面白くない。一言で言ってしまえば、野良猫の喧嘩みたいなものです。これを分析した所で、文化的対立なんて、出てきそうにはありません。もちろん、野良猫の喧嘩も、生態学という視点からは、十分に研究する価値があるわけで、ヤフーファイナンスのボードでのコンフリクトについても、多少は考えてみる価値があるでしょう。
という訳で、以下、最近感じていることを述べておきますね。
まず、ヤフーファイナンスのボードとは何かという点なんですが、これは、ヤフーが上場株式のそれぞれの銘柄ごとに設けた掲示板で、参加者は匿名でメッセージを書き込めるようになっています。一応、メッセージ書き込みにはユーザ登録が必要なんですが、メイルアドレスがあれば登録可能で、どこぞの無料メイルアカウントをとってくれば、登録可能です。
このあたりの連鎖も面白いものがありまして、無料メイルアカウントを取るには、他の連絡先が必要な場合が多く、匿名投稿者の正体をトレースすることは、メイルアカウントからも、可能ではないかと思われます。
もちろん、ヤフーは投稿者のIPアドレスを把握しているわけで、個人がプロバイダと契約してインターネット接続していれば、ヤフーとプロバイダが協力すれば正体を割り出すことが可能です。ただし、インターネットカフェのような、正体不明の人にインターネット接続を許す場所からやられると、この手段は使えなくなります。
次に、ヤフーファイナンスを使う目的、メッセージの種類なんですが、
第一に、特定の銘柄に興味を持つ人の情報交換、雑談といったメッセージが投稿されます。これは、本来の目的に沿った使われ方だと思います。このタイプの参加者は、3つの区分に分類できるでしょう。
第一区分がホルダー、その銘柄の株を持っている人で、株価の上昇を望んでいます。
第二区分が売り方、及び、安値を待っている人たちで、株価の下降を望んでいます。
第三区分が評論家、学者といったタイプで、株価の予想を楽しむタイプの人です。
第二は宣伝、これは、投資コンサルタントへの勧誘記事が、かなりの頻度で投稿されます。これは、ヤフーの利用規定に違反したもので、非難もされ、ヤフーもこれを削除しています。また、他の銘柄を推奨する記事も、ある種の宣伝記事と言えるでしょう。
第三のタイプのメッセージがアラシ、自慢、悪口で、猫の喧嘩に当たるんですが、これがなかなか面白い。
まず、アラシというのは、誰も歓迎しないような記事を、繰り返し、高頻度で投稿するもので、これをやられると、まともな記事を探し出すのに骨を折るようになります。この動機ですが、一般的なボードでは、人を困らせて喜ぶ、といった動機が多いのでしょうが、ヤフーファイナンスの場合は、“大損して狂った人”やら“バイトで”なんてのが多いようです。まあ、バイトが、事実お金を貰ってのことかどうかわかりませんが、掲示板を荒らすことによって、その銘柄に興味を持つ人を掲示板から遠ざけ、買い手を減らし、株価を下げてやれってわけですね。まあ、ヤフーのボードを荒らしたくらいで、そうそう、株価が下がるとも思えませんがねえ。なお、ヤフーは、この手のアラシを防止するため、同じ人からの投稿数を制限しているようですが、一人が多数のハンドル(名前)を用いて、この制限を回避している様子です。
次に、自慢なんですが、株投資のボードですから、「おれはこれだけ儲けた」といった記事が多い。逆に、こんなに損をしてしまったという記事もあります。しかし、これが事実かどうか、誰にもわかりません。更には、実際には株式投資をしていないにもかかわらず、あたかもしているような記事を書く、“バーチャル”と呼ばれている人たちもいるくらいです。
結局の所、株式をどれだけ売り買いしたか、どれだけ儲けたか、損したかという情報は、掲示板の記事としては、あまり意味がないとしか、言いようがありません。そもそも、他人が儲けようが、損をしようが、無関係の人にはどうでも良いことでもあるんですね。
悪口というのは、これは実にバラエティーに富んでいます。まずは、一般的に損をした人を馬鹿にする投稿で、株価が上がれば売った人を馬鹿呼ばわりし、下がれば買った人を馬鹿呼ばわりする。言われたほうは、カチンと来るかもしれないし、そういう反応が見えない所で起こっているだろうと、面白がって投稿するのでしょう。実に簡単で、効果的な憂さ晴らしでしょうけど、そんなことをするって、なんか寂しい話ですよねえ。「やーい、馬鹿」程度は甘いほうで、「死ね」「樹海行き」なんて、陰湿なメッセージが多く見られます。
第二には、自分と意見の異なる人を罵る悪口で、これは、あらゆるボードに共通して見られます。まあ、議論で説得できず、罵詈雑言の投稿に及ぶというのは、敗北を宣言しているようなもの。こんなメッセージも無視するに限るんですが、中にはムキになる人もおり、喧嘩になることも、、、
第三の悪口は、政治家、経営者、企業そのものへの悪口で、政治家で槍玉に挙げられるのは、小泉首相、竹中財務相、まあ、わからないではありません。経営者がぼろくそに言われるのは、株価が大きく下げたとき、これも、その気持ち、わかりますねえ。
さて、たかが猫の喧嘩といいましたけど、随分と書いてしまいました。最後に、対処法だけ書いておきましょう。
第一に、不適切なメッセージは無視すること。そもそも、ろくでもないメッセージを書く人が、真実を書いているなんて保証はぜんぜんありませんし、読者の多くも、そのメッセージが無価値であると、すぐに気付きますので、相手にする必要もありません。
第二に、目に余るメッセージは、ヤフーに通告すること。個人で対処しようと考えると、たいていの場合、やぶ蛇になります。
第三に、不適切なメッセージは投稿しないこと。匿名で書いていても、バレるリスクはあるんですよ~。仮に、正体がわからなかったとしても、ろくでもないメッセージを書きなれてしまうと、そういう人間になってしまいます。たとえ匿名でも、品行方正を心がけるべきでしょう。