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半導体産業の未来、きっとあるはず

見るとはなしにテレビを見ていたら、日本の製造業の衰退振りを論じる番組が流れていました。日本の半導体産業、韓国、台湾等に追い越され、一度は低迷した米国にも抜かれる有様、その原因を、おごりだとか、マネージメントのミスだとか、いろいろと議論していました。

しかし、D-RAM、日本がトップを走っていたときにも、こんなのじゃ駄目だ、という議論があったんですね。つまり、D-RAM、半導体の中では一番作りやすい。はっきり言って、さほどの技術はいらないんです。だから、後発の、韓国、台湾に追い越されるのは、繊維や軽機械産業の歴史が繰り返されただけ。米国が強いのはCPUで、これには独創性が必要、日本にはそいつがないと、ずっと問題になっていたんです。

しかし、CPUの分野では、日本も結構頑張っています。プレーステーション2に使われているCPUは、日立のSH-3というチップだし、次世代のプレステも、東芝がチップを作るような話をしていました。ゲームマシンといっても、馬鹿にしたものじゃありません。ゲームマシンは、立派なコンピュータです。初代のファミコンは、アップルと同じ6502を使っていましたしね。

問題は、インテルが圧倒的なシェアを押えていることです。その世界に食い込んでいくためには、マイクロソフトのウインドウズが効率よく走るようにしなければいけないんですけど、そういう世界、日本のメーカーの人には、多分難しいんでしょうね。

ところで、CPUもメモリーも、いずれは古臭い技術になるんじゃないかと、私は考えています。その一つの動きは、#19で紹介したザイリンクスのチップ、いわゆるプログラマブルゲートアレーで、不揮発性のメモリーに情報を書き込むことで、ユーザの設計した論理回路に構成できるというチップですけど、これ、デジタルシグナルプロセッサを内部に作り出すこともできるんですね。

つまり、最新技術で作られたプログラマブルゲートアレー、それだけの、ゲートの数と、速度がある。プログラマブルゲートアレーなら、独創性はCPUほどは要求されません。力技が通る世界ですね。独創性は、ソフトの部分、つまり、ゲートアレーのプログラムに要求されるってことになります。

もう一つの動きは、ホームページの「意識を持った機械の詳細」で紹介した、メモリー混載プロセッサ、つまり、メモリーとロジックを組み合わせたチップです。これ、単なるメモリーではありませんから、D-RAM量産よりは、日本メーカに勝ち目もあるでしょう。ロジック部分はプログラマブルにして、メモリーとの組み合わせにもプログラムの余地を設ければ良いですね。

このようなチップ、よく考えてみると、実に強力な、万能チップでもあります。このチップを一つだけ使って、コンピュータを作ることができます。チップのピンは、いくつもの入出力インターフェースですから、その先に、USB やLAN等の各種インターフェースICをつなげば、システムができてしまいます。高機能の計算機はマルチチップで構成すれば良く、行列演算を高速に実行したり、「意識する機械」で議論したような、人間のニューロンの働きを実現するのにも使えるでしょう。

半導体産業の世界、決して固定されたものではなく、これからも、驚くような変化がいくつも起こるでしょう。一旦敗れた日本の半導体産業も、まだまだ、復活のチャンスがいくらでもあるはずです。そのとき勝ちを収めるためには、柔軟な発想で、新しい技術にも果敢に取り組む姿勢が必要なんでしょう。