少し前に読んだ新聞で目にした記事なんですけど、寿命の尽きた原子力発電所の原子炉を、無害な形に廃炉するための費用を、原子力発電のコストとしてだけでなく、全ての電力料金から徴収するようですね。
これ、なんかおかしいと思いませんか?
寿命の尽きた原子炉を解体する費用、これ、原子力発電のコストの一部のはず。そりゃ、原発の廃炉、莫大な費用が掛かるのでしょうが、初めからわかっていること、これを、風力発電からも徴収するなんて、そりゃ、むちゃくちゃです。だって、風力発電に原子炉使わない、だからその廃炉、風力発電とは関係ない。廃炉が必要なのは、それが原発だからこそ。廃炉の費用は原発の必要経費です。
そもそも政府が原発を強力に推進した一つの理由が、低コスト、でも、廃炉費用を無視してコスト計算しておいて、低コストはないですねえ。廃炉に費用が掛かるということは、原発に批判的な立場の人たちがかねてから主張していたこと。それに知らん顔をしておいて、いよいよ切羽詰ると助けを求める、問題先送り、助けられてアタリマエ、のこの構図、金融危機でしばしばみられた、モラルハザードと同じなんですね。
もう一つの問題は、廃炉を無視した原発のコスト計算、これ、さまざまな工業製品の廃棄の問題と重なって見えるのですね。どんな製品もいずれは廃棄される。廃棄を考えた製品を作れというのが最近の流れ、製品のコストに廃棄のコストまで織り込むべきとの考えもあります。だけど原発、廃棄は考えないという。原子炉、売ってしまった製品ですらない、自分のところで最後まで持っている設備なんですよ! コレも無責任、モラルの欠如です。
原発に関しては、最初からモラルの問題がありました。これ、政府が推進すると決め、多くの反対意見を封殺してしまった。原子力の研究、原発を推進する立場なら予算が付きやすい。危険性を指摘すると、国の方針に逆らう奴、なんてレッテルを貼られてしまう。こんなやり方、まるで独裁国家です。官僚独裁が生きた分野、それが原発だったんですね。
こんな学問、やり方の是非以前に、その結論の正しさが全く当てになりません。なにしろ、原発は安全で有利、と最初から結論を決めて、研究しているんですからね。
その後の経過を見れば、絶対安全と喧伝された原発、何度も事故を起こしました。トラブル隠しやデータの捏造も盛んに行われる。モラルハザードのてんこ盛りですね。その原因は、役所の無謬主義と権威主義、それに乗っかる学者の無責任さ。
挙句の果てには、錦の御旗の低コストエネルギーも、どうやら廃炉コストを無視したいい加減な計算。おまけに、コレをみんなが負担しろと。モラルの欠如、行き着く所まで行ってしまった、それが日本の原発の今の姿なんですね。
過ちを正すに、遅すぎることはありません。今からでも、日本の原子力政策、見直すべきでしょう。