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反変テンソルと共変テンソル

本ページは誤った記述を含みます。正しくはこちらのページをご参照ください。

日曜日のこのブログでは、少々無駄なことをしてしまいました。

ことの起こりは、時間が虚数的に振舞うという原理を受け入れれば物理法則がエレガントに書き表される、ということから、一般相対性理論(アインシュタインの重力理論)も簡単になるのでは、などと考えたのが敗着。

虚数時間を扱う記述はミンコフスキーの4元時空をベースに語られることが多いのですが、ディラックの「一般相対性理論」では虚数時間の概念をいっさい出しておりません。

その代わりに、上付きの添え字を持つテンソルと下付きの添え字を持つテンソルを時空座標の符号を変えて扱うように定義しております。

テンソルの上付き添え字と下付き添え字を区別して扱うのは煩雑である一方、虚数時間を用いてこれらが簡単になれば良い、などと考えたのが大間違いでした。

と、いうわけで、本日は添え字の上下にどのような意味があるのか、簡単に述べておこうと思います。この稿では、ベクトル中心にお話が展開いたしますが、ベクトルとは添え字が一つのテンソルである、とご理解くださいね。

まず、ここでやろうとしているのが、曲がった空間を扱うための数学的手法を固めておこうということで、直交座標系では平らな空間しか扱うことができない、という問題があります。

座標系が、ゴムひもを縦糸横糸とするメッシュのような存在で表されると考えますと、この空間は自由に伸び縮みし、いかなる曲面にも重ねることができます。

で、これを数学的に扱うためには、それぞれの場所に互いに独立なベクトルを(次元の数だけ)割り振り、これらを用いて現象を記述すれば良い、ということになります。

3次元空間の場合は、三つのベクトルe1e2e3を考え、座標を表すベクトル xx = e1 x1 + e2 x2 + e3 x3 で表すことにいたします。直交座標系(デカルト)流の表現では、(x1, x2, x3) とも書けますね

ここで、e1 などは基底ベクトルと呼ばれ、空間内の位置の関数として与えられます。つまり、場所によって異なっていても良いのですね。基底ベクトルは、座標系の曲がりや伸び縮みに応じてさまざまに変化いたします。直交座標系であれば、すべて大きさは1であり、互いに直交する、といえたのですが、この前提は捨てるしかありません。

直交座標系の場合は、座標系を平行移動したり、任意の方向に回転することができます。直交座標系という制約を外すと、座標軸の間の角度を変えることもできれば、目盛りを伸び縮みさせることもできますし、座標軸を曲げることもできます。

さて、ベクトル(速度や二点間の位置の差)は座標系には依存しない、座標系を定義する以前から決まっております。一方、座標系のほうは、任煮の方向に座標系を割り当てることができまして、その座標系に基づいてベクトルを表現する、ということが行われます。

で、同じベクトルを表す場合、基底ベクトルが倍になりますと、これに対応する係数は半分になります。つまり、e1' = 2 e1 となりますと、x1' = x1 / 2 としなくちゃいけません。

なるほど、これらの数値は、基底ベクトルの変化に対して反対に変化するのですね。で、これを反変ベクトル、というわけです。

さて、スカラーの微分、ということを考えますと、共変ベクトルという概念もすんなり出てまいりまして、反変ベクトルと共変ベクトルという二つの違いが明白になるのですが、このお話はまた後ほどのお楽しみ、ということにしたいと思います。ヒントは、分母、です。

実は、私、このところ藤沢周平の時代小説にはまっておりまして、あまり、物理学やブログや哲学などに関わりあっている時間が取れない、という事情がございます。

ま、藤沢周平につきましては、また稿を改めてご紹介することもあろうかと思いますが、本日はこの辺で失礼させていただきます。(続きはこちらです。)


虚数時間の物理学、まとめはこちらです。