昨日のブログへの追加です。
ベクトルは自然界の実在であるのに対し、座標は人が勝手に定めた座標系でベクトルを計量したものであって、座標系やこれで表された座標値は、人の精神内部にある概念である、ということを前回述べました。
ただ、座標値から算出される値であっても、結果的に座標系に関わりのない値が得られるのであれば、それは自然界に実在する値である、ということができます。その代表的なものが xk yk です。
これを実際に計算いたしますと、次式のようになります。
xk yk = xk (ek・y) = x・y
つまり、ベクトルの内積は座標系に関係のない、ベクトルが定まれば一意に決まる量であり、人間精神に関わりのない、自然界に存在する量である、ということができます。
この中で特別なものがx = yの場合、すなわちx2でして、ベクトルの大きさの二乗を意味します。
通常の3次元空間の場合は、ベクトルの大きさの二乗は必ず正になるのですが、4元時空においては、負になる場合もあります。
xが二点間の距離である場合、本ブログが行っているように、時間が虚数的に振舞うという前提の下では、時間的に離れた二点間ではこの値が負になりまして、なるほど、時間は虚数だから二乗したものが負になると納得できる結果となります。
一方、ディラック流の、反変ベクトルと共変ベクトルで、空間座標の符号を変える、というやり方をとる場合、距離の二乗が負になる場合は空間的に離れており、正になる場合は時間的に離れている、といいます。
これは、ある意味奇妙な言い方でありまして、せっかく虚数が出てこないように計量テンソルを定めたにもかかわらず、距離の二乗が正になったり負になったりする。時間と空間で虚実の関係が入れ替わっている、ということになってしまいます。
なぜこんなことになるか、といいますと、(これは私の考えなのですが)ディラック流のやり方は、基底ベクトルという考え方は隠されているものの、ディラック流の計量テンソル定義では、空間軸に対応する基底ベクトルが虚数の座標で表示されていることと無縁ではない、と思われるのですね。
でも、座標値は実数であるべきであって、これを虚数としてしまいますと、肝心のベクトルがどの方向を向いているのか、わからなくなってしまいます。このやり方、お客が来るからといって、部屋に散らかったガラクタをみんな押し入れにぶち込んでいる、といった情景が髣髴されるような話ではあります。(2019.1.9追記:この部分は訂正しています。前日のエントリーをご参照ください。)
もちろん、数学の理論は何をベースにしても構わず、基底ベクトルekをベースとする代わりに計量テンソルgkjをベースにしても良く、あるいは計量テンソルすら使わずにクリストッフェルの記号を基本に据えて理論を展開しても良いわけです。
しかしこれは数学だからいえることであって、物理学の場合は、もう少し自然に密着したものであって欲しいと、私は思うのですね。まあ、数学に強い人は、何を基本に選んでも論理が展開できるのでしょうが、普通の人にはこれは耐え難いのではないか、と思いますし、そもそも物理学は自然界の叙述であって欲しいのですね。
さて、この先の展開は、少々ややこしくなります。
まず、スカラーの微分は、普通に行うことができるのですが、ベクトルを微分しようとすると、場所によるベクトルの座標表現の変化を考慮に入れる必要があります。なにぶん、曲がった空間といいますものは、場所によって基底ベクトルの方向が少しずつ変わってまいります。
これは、同じベクトルを平行移動した場合の座標表現の変化で求めることができまして、これを用いて微分を補正しなければなりません。
ここで出てまいります記号がクリストッフェルの指標でありまして、これを用いて空間の曲率(リーマン・クリストッフェルの曲率)が定義される。で、その添え字を少なくしたものがリッチのテンソルであり、さらに少なくしたものがスカラー曲率である、という話になります。
で、アインシュタインの重力方程式が出てくるのですが、これは、何らかの式の展開によって出てきたというものではなく、アインシュタインが、えいやっとひねくりだした式である様子でして、ただただ結果が良くあっている、というお話である様子。
さらにその先には、アインシュタインの重力方程式を解く、という作業となりまして、ブラックホールはどうするとできるか、などという面白い話題がいろいろと出てくるのですが、この方程式、そうそう簡単に解ける代物ではありません。
ということになりますと、クリストッフェルの指標と空間の曲率を求めるあたりまでが、普通の凡人にできる限界の様子。まあ、一般相対性理論の追求も、きちんと論理を追うのはこのあたりまでに止めておくのが正解かもしれません。
まあ、もう少しトライしてみたい、とは思っているのですが、、、
虚数時間の物理学、まとめはこちらです。