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「涼宮ハルヒの驚愕」を読む:追記

長々と続けてまいりました「涼宮ハルヒの驚愕」ですが、昨日のブログで、一旦読み終わったつもりだったのですが、一番美味しい話を語り損ねていることに気づきました。キョンを祭り上げよう、というお話ですね。

α側のストーリーにこのお話を挿入するといたしますと、ミヨキチの姉と別れて橘京子に喫茶店に連れ込まれた直後、がまず最初のお話となります。それでは、前回ご紹介いたしましたキョンのナレーションからお話を始めることといたしましょう。

キョンのナレーション:そのとき、俺の背景にハルヒの影がちらついていることなど、俺には気がつく由もなかったのさ。気が付いていたら、あんなことは、するはずがないっ!

キョンのナレーション:橘京子は、有無を言わさず俺の腕を掴むと目の前の喫茶店へと入った。奥のボックス席に陣取った彼女は、たまたま近くにいたウエイトレスに「コーヒー二つ」というと、俺があーもうーも言う前に、こう切り出した

京子:お話しは佐々木さんから聞かれているかと思いますけど、お受けいただけますでしょうか?
キョン:え? えーと、何の話でしょうか?
京子:私たちは、涼宮さんがあのような力を持つのは間違いであった、と考えています。これはご存知ですよね
キョン:つまり、古泉の組織とは敵対関係にある、ということですね(えーい、いまいましい。なんでこんな奴と会話をせにゃならんのだね?)
京子:はい、そうですぅ。で、本来あの力を持つのは、あなたである、と考えています
キョン:え? 俺が? ハルヒの力を持つ? 冗談いっちゃいけません
京子:いいえ、私たちは本気です。涼宮さんがあの力を持つようになったのは、情報爆発のため。校庭に全宇宙に向けたメッセージを書いたから、とされているのですが、それを書いたのは、本当は、あなた

キョンの語り:目が点になる、という言葉があるが、そのときの俺の目は、多分、点になっていただろう。自分じゃ見えないのが残念だが。あまりの話に俺は一瞬言葉を失った。そう、あれは4年前の七夕の日、朝比奈さんに連れ出されてハルヒの落書きの手伝いをする羽目になったのだ。思い起こせば、ライン引きを持って校庭を駆けずり回ったのは俺だった。ハルヒの命令にしたがってな。この関係は、今だって、何一つ変っていないのだが

京子:思い出していただけましたか。さらに、周防さんの情報では、涼宮さんに力を注入したのもあなただ、ということです。これには心当たりはありませんか?
キョンの語り:ハルヒに力を注入? そんなことを俺がするはずはない。するはずはない、のだが、長門の歴史改変を元に戻したとき、俺がやったことは、まさに、ハルヒの力をハルヒに取り戻させたのだったよなあ。しかしあれは、俺が持つべき力ではなく、ハルヒが持つべき力だったはずだが、、、

京子:思い出していただけたんですね。あなたが力を持つべき人である、という証拠は、あなたに閉鎖空間があることから、当然であるといえます。私たちはそのことに4年前に気づきました。そう、あなたが情報爆発を惹き起こしたときに
キョン:閉鎖空間? そんなものが俺にもありましたか。それって、背後霊みたいに、誰にでもあるものなんじゃあないですか?
京子:いいえ、これを元からもっているのはあなただけ。涼宮さんの閉鎖空間は、あなたが与えたものです。あなたが自分のあるべき姿に最初から気づいていれば、そんなことはする必要がありませんでした
キョン:ちょっと待てよ。俺の認識はそうではなくてだな(う~ん、こいつにどこまで話して良いものか)
京子:百聞は一見にしかず、です。手を出して、目を閉じてください
キョン:これでいいのか?

キョンの語り:橘京子は突然、テーブルの上に置いた俺の手を握り締めた。うっ、冷たい手だな
京子:もう目を開けて構いません

キョンの語り:目を開けた俺たちは、さっきまでいた喫茶店の店内とはまったく別の場所にいた。どこまでも広がる黄色い砂漠。気温は高くもなく、低くもなく、風は吹いていないわけではないが不快なほどではない。この光景、俺は突然気が付いた。何が俺の閉鎖空間だね。これは、あれではないか

キョン:おいおい、これは、コンピ研部長を探して迷い込んだのと同じ、砂漠、ではないか
京子:他の方のも、みられたことがあったのですか。まあ、男子高生の心象世界は、みな、似通っていても不思議はありませんが、、、
キョン:それにしても何にもないな、俺の世界。あ、この世界って、とんでもない奴がでるんじゃないか? たしか、カマドウマをでかくしたような奴だったような、、、
京子:大丈夫です。ここではあなたが神だから、何も恐れることはありません。涼宮さんのあれをみたことがあるでしょう?
キョン:神人か。そりゃあ無敵かもしれないが、、、いや、そうではない。神人になった俺を京子さんたちが狩る、というわけか。おれは嫌だね、そんなの
京子:あなたが閉鎖空間を広げなければ、私たちはそんなことをする必要はありません。あ、あまり長い時間こちらにいると怪しまれますから

というわけで、閉鎖空間を早々に切り上げて喫茶店に帰ります。で、京子は、キョンの後ろで怖い顔をして自分を睨みつけているハルヒに気づくのですね。

京子:私帰ります。お話はまた今度。そのときは、他の方々にもご紹介いたします
キョンの語り:そういうと橘京子は伝票を引っつかんで席を立った。急に、どうしたんだろう、と俺は京子の後姿を眼で追っていた。京子がレジの前に立ったとき、視界右半分が、何かぼやけたもので遮られた。当然のことながら、俺はその邪魔者が何か気になったのだが、それが何者であるか気づいた瞬間、俺はこの世界の終わりを確信した。何ということか。涼宮ハルヒが、そこにいた

ハルヒ:ふっふーん。あんた、やってくれるじゃない。手なんか握っちゃったりして。で、だれが本命なの? あの子? 幼友達の佐々木さん? 入団希望の新入生? 映画につれてったっていう美少女かな? あれ、姉妹なのよねえ。凄いことやるじゃない。そういえばキョンはみくるちゃんといちゃついてたこともあったわねえ。神聖な部室をなんと心得ているのかしら?
キョン:いや、これはだなあ、、、(なんとかなりますように、なんとかなりますように、、、)
ハルヒ:ま、別に私はあんたなんかにゃ興味がないからいいわ。でも、女って怖いんだから。それだけは覚えておきなさい
キョン:それはもう、充分に

と、続くわけです。さて、お話は翌日の放課後に続きます。既に書きましたところですが、お話のつながり上、ここにも再録しておきましょう。

キョンの語り:翌日の放課後、俺は部室で針の筵に腰をかけている。昨日のあれは、どう考えてもまずかったよなあ。特に、手を握っているところを目撃されたのがまずい。その前の話は、聞かれていなかったはずだが、聞かれていなかった、と思いたい。なあ、古泉。手を握る以外に、一般人を閉鎖空間に連れて行く手立てはないのかな? あるのなら教えて欲しい。
古泉:僕は知りません。涼宮さんにお願いすれば、教えていただけるかも知れませんよ
キョン:で・き・る・か
みくる:あのー、涼宮さん、どうしたんでしょう。なんか、すごく機嫌が宜しいのですが
ハルヒ:ふ~ん、みくるちゃん、気が付いた? この世の不思議~ぃ、私は一つ発見したのよ。それが何かは、秘密、だけどね
みくる:え~! なんですか、それ。気になりますぅ
ハルヒ:秘密だといってんでしょ。もうじきSOS団1周年になるんだから、それまでに各自、少なくとも一つは、この世の不思議を発見すること。これはノルマ、できなきゃ罰金だからね

キョン:(俺は、ハルヒの目を気にしながら、小声で古泉に聞いた)ところで一つ相談したいことがあるんだが、あとで話に乗ってくれないか
古泉:涼宮さんがらみで?
キョン:いいや、あいつにゃあ、全く関係のない話だ

キョンの語り:そのとき突然ハルヒが立ち上がった。何かまずい展開となるのではないか、と内心恐れていた俺だったが、ハルヒは予想外の行動にでた
ハルヒ:みくるちゃん、一緒に先に帰りましょ
みくる:え? なんでですか?
ハルヒ:武士の情けよ。ついでに面白い話も聞かせてあげるわ

キョンの語り:ハルヒに武士の情けなどというものがあるなどとは、そのときはじめて聞いたのだが、先に帰ってくれるとはありがたい。朝比奈さんの着替えを廊下で待つことしばし、いつものようにハルヒに拉致されるように去っていく朝比奈さんの後姿を網膜に焼き付けてから、俺たちは部室に戻った。長門は何事もなかったように本を読み続けている。長門にも、聞いといてもらったほうが良いだろう

古泉:さあて、ご相談とはなんでしょう
キョン:昨日、橘京子と名乗る女と会った。古泉たちと敵対する超能力者のな。で頼みごとをされたんだが、それで困っているんだ
古泉:動き出しましたね、かれらも。まあ、こうなるであろうことは予想していましたが。で、あなたの頼まれたことは、佐々木さんの説得、ちがいますか?
キョン:佐々木さん? いーや、そんな話は出なかったぞ。何で俺が佐々木さんを説得しなければいけないんだ?
古泉:彼らは、涼宮さん以外の第三者を神として崇めようと考えているんですよ。それが誰であるか、までは、機関は掌握していないのですが、このところ、橘京子と佐々木さんが蜜に接触しておりまして、彼女がそれである、という可能性が急上昇しているんですよ
キョン:それがな、橘京子は、「力を持つべきであるのは、涼宮ハルヒではなく、なんとこの俺だ」というんだ
古泉:……。これは驚きましたねえ。そういうことでしたか。そうなりますと、佐々木さんは、あちらにとってのあなた、ということになりますね。確かにそれもありそうなケースでした。機関も、少々考えが足りませんでしたね。しかしまた、何であなたなんですか?
キョン:宇宙人へのメッセージを書いたのも俺、ハルヒに力を注入したのも俺、なんだそうだ

あ、例によりまして、文字数制限です。この先は、また明日に書くといたしましょう。


この考察は、最終的に『「涼宮ハルヒの驚愕」を推理する』なる文書にまとめました。