このところ、米澤穂信氏の作品を立て続けに読んでいるのですが、本日は「犬はどこだ」を読むことといたしましょう。
同書は、これまでの米澤氏の作品とは一味違い、萌え要素は皆無の純然たるミステリーです。で、ミステリーとして、かなり良くできた作品であるといえるでしょう。
何と言いますか、「クドリャフカの順番・十文字事件」のような多面的描写を行っておりまして、映画風の場面切り替えの早い、変化にとんだ読み応えが楽しめます。
この作品に対する、私の個人的な興味は、ネットがらみ、ということなのですが、あまりお話しするとネタバラシになってしまいます。どうも、ミステリーは評論しにくくていけませんね。
さて、これにたどり着くまでの私の米澤作品遍歴譚ですが、
まず、以前ご紹介いたしました「愚者のエンドロール」ではまりました。はまったあげく、同じやり方で「涼宮ハルヒの驚愕」を推理する、などということになっております。
当然のことながら「氷菓」も読みました。これも悪い作品ではありませんが、「愚者のエンドロール」を読んでしまいますと、今ひとつ迫力に欠けます。
で、「クドリャフカの順番」となるのですが、これは文句なく面白い作品です。
こうなりますと、米澤作品を片っ端から読むしかないのですが、「さよなら妖精」は、以前書きましたように、一度しか読めない作品。もちろん、買って損をしたとは決して思いません。
あと、有名どころといたしまして、「春季限定いちごタルト事件」と「夏季限定トロピカルパフェ事件」を立て続けに読んだのですが、私的にはいまいちの作品。まあ、これは趣味の問題だと思います。
で、「犬はどこだ」となるわけです。
さて、同書の無難なところですが、あとがきが充実しております。で、驚いたことに、古典部シリーズは4冊目が出ているのですね。「遠まわりする雛」がそれでして、早速購入してまいりました。
こちらは、明日以降のお楽しみといたします。あまりにも面白い作品であった場合は、来週のこのブログでご紹介することといたしましょう。
その他、このところ、オリジナル文書に置きました「『涼宮ハルヒの驚愕』を推理する」という文書の手入れをしているのですが、どうもラストの部分が気に入りません。
つまり、長門の世界改変は昨年12月からきっちり1年前までであるのに対し、ハルヒが校庭に落書きをしたのは4年前の七夕で、橘京子が佐々木の力に気づいたのも4年前。(いずれも分裂の時間から数えて、の話です。)
そうなりますと、京子が佐々木の力に気づく理由を長門に求めることが難しくなりまして、他のエピソードを挟む必要が出てくるのですね。
で、もう一つ、登場して欲しい人物がおりまして、つまりは、朝比奈みくる(大)が欲しいところなのですね。そういうことになりますと、少なくともβ側には、もう一つエピソードを挟まざるを得ません。
さてそれはいったいなんであろうか、ということになりますと、これがなかなか難しい。ま、もう少し考えてみることといたしましょう。
ふうむ、スペースがまだたっぷりありますので、現在考えていることをちょっと書いておきましょう。
まず、長門の世界改変は昨年12月18日に、それ以前の365日分に対して行われたことは明白です。つまり、その開始時点にバックアップを作成した場合、2年前の12月18日にバックアップが誕生した、ということになります。
これは、「推理」のα側、つまり、京子がキョンをハルヒ代わりと考える場合は問題がないのですが、βの側、つまり佐々木をバックアップ代わりと考える場合に無理が生じます。
なにぶん、京子は「分裂」p190において、「4年前に」自分に力が宿ったことを知り、それが佐々木に与えられたものであることを知った、と語っているのですね。
キョンであるなら、4年前の七夕に何度も来ておりますので、時間旅行をしたハルヒのバックアップであるキョンが京子に力を与えてしまった、という可能性もありえます。
では、佐々木の場合どうなるか、ということになりますと、今のところ2種類の可能性しか思いつきません。
第一の可能性は、昨年12月18日は、4年前の七夕同様、数多くの時間旅行が同一の時空点に対して行われたため、時空の歪が限界を超え、この二つの時点のあいだに、情報の流通が発生してしまった、という可能性です。これは、なかなかに説明が難しいのですが、4年前にハルヒが起こしました情報爆発の原因を説明する根拠にはなりえます。
第二は、藤原が佐々木を4年前の七夕に連れて行っている、という可能性で、そうする理由は、京子のストーリーを規定事項とするため。
第二のストーリーであれば、なかなかに華やかなお話ともできそうです。というのは、これに気づいた朝比奈みくる(大)が歴史改変の阻止に出動する、というパターンがありえるのですね。と、いうわけで、こちらをメインに考えることといたしましょう。
このエピソードはβ側のストーリーに挟まざるを得ません。まあ、ハルヒの悪夢話のあと、ですね。
例によりまして、朝比奈みくる(大)からの手紙が靴箱に入っており、昼休みの部室にキョンは呼び出されます。そこで、朝比奈は藤原が佐々木を過去(4年前の七夕)に連れ出そうとする現場に急行します。
部室に向かうキョンに、喜緑さんが警告したりすると良いかもしれないですね。時空の歪が限界に達している。これ以上時間旅行をするのは危険。なとというわけです。で、喜緑さんはキョンに、「長門さんから頼まれました」といって、お守りを渡す。これは、最後の解決の鍵となります。
藤原にしてみれば、ハルヒの落書きを妨害する一方、佐々木の力を京子に感じ取らせれば良いわけですが、朝比奈にしてみれば、佐々木の力を京子が感じるのは規定事項であるとしても、ハルヒの落書きは成功させなければいけません。
この部分で、どのような小競り合いがあるのかを考えないといけないのですが、まあ、藤原が中学生の涼宮に「おいこら、ちょっとこっちこい」などと呼びかけるのがありそうな話。これを佐々木は「乱暴は止せ」止めさせようとするのですね。
で、ありそうな展開といたしまして、涼宮は「ふん、なによあんた。私は忙しいんだから」などと捨て台詞を吐き、藤原を相手にせず去ってしまいます。藤原の妨害が失敗するのは、佐々木に制止されたから、という一面もあるのでしょう。
そうなりますと、藤原と佐々木が仲たがいし、藤原は佐々木を4年前の七夕に放置するぞと脅す、なんてのがありそうな展開です。そこにキョンと朝比奈が登場し、度重なる藤原の悪行に、ついにキョンがマジギレし、藤原ともみ合いとなる、というのが面白そうな展開です。
藤原は、キョンに掴みかかられたところで、これから逃げようとタイムマシンを作動させ、キョンともども時空の渦に入るのですが、この時点で時空の歪が臨界を越え、藤原のTPDDが操縦不能の状態になり、キョンは時空の渦の中に投げ飛ばされる、なんてのはどうでしょう。
で、気づいたときは、長門の部屋の日本間、などというのがありそうな話かもしれません。まあ、「長門落ち」とでもいうべき展開でして、困ったときの長門頼み。病気の心配をするキョンに「もうへいき」などと長門が語ったところに、佐々木、朝比奈(大)もやってきて、めでたしめでたし。朝比奈(大)は靴を取り返す、な~んて落ちがつくのではなかろうか、などと考えている次第です。
しかし、こういうストーリー展開であるといたしまして、佐々木はいったいいつの時点で藤原の誘いに乗れば良いのでしょうか? なかなかに、論理を通すのが難しいですね。
結局のところ、藤原が佐々木を4年前に連れ出すとしても、藤原はあくまで佐々木に対しては紳士然としていなければいけないし、佐々木に気づかれないところでキョンと朝比奈(大)の連合チームは藤原と戦わなければいけない、ということになります。
と、なれば、佐々木の時間旅行と、藤原のハルヒ落書き妨害譚の二つの話は、独立したものとしたほうが良いかもしれませんね。ま、前者は朝比奈(大)に、軽く語らせれば良いだけの話ですが。