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澤上篤人著「10年先を読む長期投資」を読む

本日は、澤上篤人氏の「10年先を読む長期投資―暴落時こそ株を買え」を読むことといたしましょう。

澤上氏は「さわかみファンド」で知られる長期ファンドを運営している方で、企業と共に歩むその投資姿勢は、一部の方には熱狂的な支持を受けております。

私の投資姿勢も基本は長期投資ですので、澤上氏に近い立場にあります。普通は、あまり投資関係のこの手の本には背を向けているのですが、「澤上」の二文字を見た瞬間に、同書を買うこととした次第です。

同書は5章構成となっており、各章の表題とその内容は、概略以下の通りです。

「第1章:投資で暮らしを守る時代」では、預貯金の金利に比べて株式投資の平均収益率ははるかに高く、長期にわたって複利運用した場合には大きな差が出ることを説明いたします。30年前の百万円を、株式投資に廻した場合の現在の資産は3,900万円となる一方、定期預金で運用したのでは761万円にしかならないということで、確かにこれは大変な差ではあります。

「第2章:長期投資は難しく考えない」では、長期投資をする際には、あまり細かなことを考える必要がないと澤上氏は説きます。ただし、景気の大きなうねりには注目し、株価が上がりすぎれば一部を売却し、これをキャッシュで持っておいて、株価が大きく下げすぎたところで買う、といたします。これはしかし、言うは易く、行うは難しであるような気が致します。

「第3章:長期投資を実践しよう―株式投資の巻」では、まず、将来伸びるであろう銘柄を探し出すことがポイントとなりますが、そのとき、儲けということを考えてはならず、将来のニーズに合った企業を選ぶべきであると説きます。で、こういう企業のリストを普段から準備しておいて、暴落時に買え、というわけです。一つの買い時は「夏休みシーズン」とのこと。まもなくチャンスがやってまいります。

「第4章:長期投資を実践しよう―投資信託の巻」では、プロに運用を委ねる投信で資金を運用する方法を説明いたします。最近では、銀行や郵便局が投信を奨めるのですが、これは手数料目当てであり、要注意であるといたします。10万円の資金があるなら、1万円ずつ10の投信に資金を投じ、その後の運用の姿勢などをみながら、どの投信と深く付き合うべきか判断するのが良い、といたします。

「第5章:長期投資の先に広がる世界」は、少々夢のような話で、ホンマかいな、と言いたくなるのですが、要は、長期投資の結果充分な資金をつくった後は、その使い道を考えなければならない、というのですね。で、自分でつくった資産なら、社会福祉などにも気前良く寄付が出来るだろう、と。はいはい。で、いよいよ今年の8月あたりから相場は面白くなりそうである、として同書を終っております。

さて、同じ長期投資でも、澤上氏のスタイルと私のスタイルでは多少異なる部分があります。澤上氏は、高いところで売ってキャッシュポジションとし、暴落時に再び買うのが良いとしております。しかしこれは素人には相当に難しく、高いと思って売っても更に上がる場合も多い一方、暴落したと思っても、更に相場が下げる場合もけっこう多いのですね。

もう一つは、キャッシュポジションにしておきますと、益回りは非常に低下いたします。実は証券会社の口座にキャッシュを置いておきますと、自動的にMRFを買った形となりまして、貯金よりは多少良い利息が付いたりするのですが、それでも株式投資には劣ります。

そういうことですので、私のやり方は、資金は常に100%株式に投資する代わりに、銘柄を定期的に見直す、ということをやっております。いわゆる、ポートフォリオの組み換えですね。もちろん、澤上氏同様、惚れた銘柄というのがありまして、常にそこに戻ってくるのはいたし方ありません。ただ、比率は大いに変動するし、ある銘柄を外している時期もあります。

株式投資におけるポートフォリオとは、いくつかの銘柄に資金を分散投資するやり方でして、異なる値動きをする銘柄を選ぶのが鍵となります。そうしておけば、ある銘柄が上がればその保有比率を下げて他の銘柄の保有比率を上げる、という形で市場の変動に対応できるのですね。

まあ、最近は、私のポートフォリオ銘柄は全部下げておりますので、動きが取れない状況ではあるのですが、そこは長期投資の気楽なところでして、上がるまでじっと待つだけの話です。過去にあてたときにはさんざんあてておりまして、現在の残高は当初の投入資金に比べてかなり増加しておりますから、多少の凹みくらいでは気楽にやっておられます。

ポートフォリオの内容は、まず外せないのが高い技術力を持つ製造業でして、その代表がトヨタであると考えております。ここはハイブリッドカーの基本特許を押さえておりまして、現在でこそ、知財戦略を表には出しておりませんが、いよいよとなればその作戦を始動することができます。

その他のハイテクといたしましては、エプソンを手がけたり、ソニーをウオッチしております。エプソンは面白い技術を多々持っているのですが、本体の経営がぱっといたしません。ソニーは、大いに下げたところで買おうと考えたのですが、その後大いに上げてしまいました。

実は、ソニーにしようかエプソンにしようかと考えて、エプソンを選んだのが大失敗でもありました。そういえば、さわかみファンドはエプソンも取り上げておりました。目の付け所は一緒ですね。

ちなみに、エプソンは大いに下げた時期がありまして、そこで果敢にナンピンをした結果、利益を出して撤退することができました。

まあ、こういう危ないマネは、あまりするものではないと思いますが、トムスでいっちょうやったろか、という誘惑が今もないわけでもありません。

さて、普通であれば、ポートフォリオの第二の銘柄といたしまして、薬品、流通、食品などのディフェンシブ銘柄を入れるところです。私も過去には、武田薬品、テルモ、セブンイレブンなどを手がけましたが、今ひとつぱっとした成績をあげられずに撤退しております。

もう一つの面白い分野は、不動産、金融、証券などでして、過去には東急不動産や野村證券を手がけましたが、これも現在は撤退中。金融危機の頃は、これらの銘柄も非常に面白く、東急不動産では大いに儲けさせていただきました。しかし、その後は少々ハイリスクであるような気がいたします。

ただし、この分野のウオッチは続けておりまして、モノライン危機が本格化してメガバンクが大きく下げた場合は出動しようと、特に三菱UFJフィナンシャルグループに注目しております。先日の800円割れの際は、買う直前までいったのですが、資金を手当てする前に株価が戻してしまいました。ま、またチャンスはあるであろう、と考えてはおります。

最後のセクターが個人好み銘柄でして、ライブドアの事件以来、全く良いところがないのですが、いずれは動き出すであろうと考え、虎視眈々と狙っております。一時はソフトバンクをウオッチしていたのですが、現在は、アニメ関連銘柄に絞り、すでに、かなりの資金を投じております。

アニメ関連では、ひところの「萌え関連銘柄」ブームで大きく稼がせていただきましたが、アニメは個人好みという面白さ以外に、日本を代表する文化の一つであるという側面があり、いずれ再び注目されるときがくるであろうとみております。アニメは、麻生氏関連銘柄という面白さもありまして、しばらくはホールドを続ける所存です。

ポートフォリオを組む際に注目しているのは、ファンダメンタルでして、基本的には、PERが低く、PBRがさほど高くなく、利回りが良好である、という点です。また、ROEよりはROAを重視いたします。借金が多ければROEはいくらでも高くできるのですが、これは金利が上昇した際のリスク要因でもあります。

一番の問題は、投資した会社が再起不能となることでして、これだけは避けたいと考えております。個人好みの値動きの荒い銘柄には相当にヤバイ銘柄もありまして、こういうところとは一線を画し、私の投資対象からは外しております。これはおそらく、さわかみファンドも同様でしょう。

まあ、この点に関しましては、ファンダメンタルの分析から、およそのことはつかめるでしょう。投資しようという企業に関しては、四季報はもちろんのこと、企業自身が発表しておりま決算報告書は読まなければいけません。これらをみれば、注目企業の先行きに、どの程度暗雲が垂れ込めているかは、自ずと明らかになるでしょう。

と、いうわけで、澤上氏の著書をそっちのけに、自分の話ばかりを書いてしまいましたが、8月が面白い、という澤上氏の主張はもっともであると思います。

実は、8月15日前後の盆休みは、相場の転換点となるケースが多々ありまして、それまでに大いに値を下げてから、お盆をきっかけに急騰するというパターンが非常に多いのですね。澤上氏は、今年の8月は暑そうだ、と書いておられますが、私も全く同感。ここが一つの勝負のポイントなるであろう、と考えております。