昨日のブログで政府紙幣について議論いたしましたが、『月刊日本』平成15年7月号の丹羽論文がネットにアップされておりますのでご紹介しておきましょう。
政府紙幣につきましては昨日ご紹介いたしましたので省略するといたしまして、丹羽論文の趣旨は「デフレギャップに相当する額までは政府紙幣を発行しても問題はない」という考え方です。で、今日のデフレギャップが400兆円あると。
丹羽論文の主張するところでは、政府紙幣は負債ではなく、正味の政府収入であるといたします。もちろん、会計上の区分ではそうなるのでしょう。しかし、紙幣というものは政府の信用を背景に発行されるものであり、会計上の区分がどうであれ、負債に限りなく近い存在ではあります。
テレホンカードやスイカにチャージされているお金を考えればわかりやすいのですが、市中で流通する部分は発行元の丸儲けとなりますが、それ以上の額は市中には留まり得ません。スイカならそれ以上チャージされないだけなのですが、政府紙幣の場合は、ひとたび余剰分が発生した場合には、これを回収しない限り紙幣が過剰となり、インフレを招くことになります。
もちろん、現在はデフレが問題ですから、少々インフレになる施策は経済にプラスです。しかしひとたび政府が濡れ手に泡の歳入源を得たとなると、政府の浪費に歯止めがかからなくなる恐れが多分にあります。
無駄に使われたお金は返ってまいりません。いずれインフレに向かい始めた際、政府紙幣を回収すべき局面も生じえるのですが、これに要する費用を何によってまかなうか、ということまで考えておく必要があるのですね。
そこまで考えますと、丹羽論文にあります「国債の償還に充てる」という方向性は良い考えかもしれません。国債を償還すれば、国債の形で眠っていた資金がキャッシュに変わります。つまり、市中に出回るキャッシュが増加し、経済が活性化することが期待されます。
逆に言えば、いくら政府が経済の活性化を図ったところで、その資金をまかなうための国債が市中で消化される限りは、国債がキャッシュを吸収してしまって経済の活性化効果は期待できない、ということにもなるのですね。
これを避けるためには日銀が国債を買い入れることが必須であり、日銀が国債を買い入れるなら、経済活性化のために政府が特別にしなければならないことは何もない、ともいえます。政府紙幣の発行による国債償還は、日銀による国債買い入れに似た効果がある、ということもできます。
国債はいずれ償還する必要がありますので、これを早期に償還することは将来発生する費用を先払いしていることになります。将来資金が必要となれば、償還した分の国債を改めて発行すれば差し引きは何も変わらず、今日の景気回復というプラスの効果だけが残ることになります。
市中に出回るキャッシュを増やすことはインフレのリスクを伴うことに、重々注意する必要はあります。しかし、その監視を怠らず、使途を国債償還に限定して浪費に走ることもないのであれば、政府紙幣の発行という政策は、なかなか優れた政策であるように、わたしには思われます。
もちろん、400兆のキャッシュを突如供給するなどは論外でして、まずは数兆円規模からはじめ、状況をみながら徐々に注入量を増加する、という作戦でしょう。多分、キャッシュを100兆も供給いたしますと、相当な効果が現れるのではなかろうか、とわたしはみておるのですが、、、