先週行われました東京都議会議員選挙は、小池百合子氏率いる都民ファーストが全員当選に近い大躍進となった半面、自民党惨敗という結果に終わっております。
都議会議員選挙の国政に与える影響
民進党は、全滅となるのではということで注目を集めておりましたが、改選前議席数の7に対して5議席と、予想外の大善戦となりました。ただしこれは、前回の獲得議席数15からは1/3の大幅減であり、惨敗自民に輪をかけた惨敗ぶりとなっております。
元々じり貧状態にありました民進党に論評の必要はないと思いますが、今後国政進出が予想されております都民ファーストの今後、惨敗自民の立て直し策とその見通し、特に解散総選挙の見通し、都民ファーストと組むことで自民惨敗の原因を作り出したともいわれる公明党の今後など、国政レベルでも種々検討が必要となっております。
本日は、これらについて考えてみることといたしましょう。
自民党はなぜ惨敗したか
まず第一に、自民惨敗の原因ですが、これは三つあると思います。
第一に、よく言われております、森本、加計学園を巡る対応処理のまずさと、防衛大臣の失言問題、ピンクモンスターによります秘書へのパワハラなどなど、最近の一強自民のおごりが出たと思われる数々の不祥事が足を引っ張ったということ。
これは確かに全く無関係であったとはいえないでしょう。ただ、これが主因であるならば、これらの問題を追及しておりました民進党の支持率が上昇してもおかしくはないところです。しかしそのようなことは起こっておらず、今回の主因は他にあると考えるのが良さそうです。
第二の原因として、自民一強が、そもそも自民党が良いからではなく、比較対象である民進党がひどすぎたからであった可能性です。この場合は、比較対象として、さほどひどくはない都民ファーストが出てまいりますと、自民一強は脆くも崩れてしまいます。
これであれば、民進党の凋落も同時に説明がつきます。つまり、他に自民に代わる政党がないために、やむを得ず民進党に投票していた人たちが、都民ファーストに投票した、ということですね。
この説の問題点は、都民ファーストの政策がそもそもなんであるのかわからない、という問題があります。都民ファーストの政策を自民の政策と比較してどちらが良いかを議論しているようには見えない。小池百合子という政治家、生き方などなどが支持を集めているようにも見えるわけです。これを新聞などは「小池人気」と書くわけですね。
このことから、第三の原因が浮かび上がります。つまり、都民は政策などとは関係なく小池都知事という人物を支持している、と。
小池人気に支えられた結果
比較的最近行われました都知事選挙で、小池氏は圧倒的な支持を得て当選しております。この時点で都民が小池知事を支持しているのは自明であり、この人気が現在まで続いておれば、小池氏率いる都民ファーストが高い支持を得ることは何ら不思議なことではありません。
一つの大問題として、小池氏の都知事就任に際して、自民党の東京都連幹部の対応は、はなはだ礼を失したものでした。悔しいのはわかりますが、仮にも知事となった人に対しては、一定の敬意を示さなくてはいけません。こうなりますと、小池都知事と自民党東京都連に対する都民の見方は、一方を心情的に支持し、他方を嫌う、感覚的な対応になってしまいます。
ひとたびこのような状況に至っては、都議会議員選挙を控えて都民ファーストに敵対せざるを得ない自民党が小池知事の主張に反対意見を述べますと、その行為が嫌われてしまう。結局のところ、東京都連の知事選直後の対応に誤ったことがすべてであったように、私には思われます。
もしもあの時、自民党サイドが礼節を保った対応をしておれば、都民ファーストの今はなかったであろうし、小池百合子を自民党に取り込む道だってあったのではないかと思うのですね。惜しいことをしたものです。
自民党の立て直し戦略
さて、今回の都議会議員選挙の敗北原因が東京都連にあったと致しますと、安倍自民党といたしましては、今回の都議会議員選挙の惨敗は、さほど悲観したものでもないように思われます。
なにぶん、安倍政権の政策にノーが突きつけられたわけではなく、東京都連が嫌われただけである可能性が高いわけですから。
とはいっても、東京都連を何とかしないわけにはいきません。首都圏の議席は無視することもできず、都民ファーストが国政に進出した暁には、小池人気に対抗できる体制を自民党サイドは構築しなくてはならないのですから。
今の自民党をながめれば、小池氏に対抗できる唯一のキャラは小泉進次郎氏。今後、東京都連を改組する機会をとらえて、これを関東地方に枠を広げた組織にしてしまえば、小泉進次郎を担ぎ出す理由も生まれてまいります。そして、彼に人口(と議席数)の多い関東地方の選挙をサポートしていただけるなら、盤石の構えができるのではないかと思います。
次回衆院選の主戦場は関東地方、そして敵は小池百合子です。これに勝てる最強の体制を自民党は作り上げなくてはいけません。そしてこれさえできれば怖いものなしなのですね。
解散総選挙は何時か
今回の東京都議会議員選挙での敗北で、衆議院の解散総選挙の年内実施は難しいのでは、という見方も出ております。これは、安倍自民党の政策にノーと言われたなら確かにそうであるのかもしれませんが、単に東京都連の小池新知事に対する対応に問題があったからであるのであれば、首都圏の体制立て直しが完了した段階であれば、いつでも解散総選挙に打って出ることができます。
小池新党全国版の準備が未だ整っていないことを考えれば、この作戦は、早期に実行するのが良い。もちろん、東京都連の問題は、その前に片付けなくてはいけないのですが、都民ファースト全国組織を新たに作り出すことに比べれば、こんなことは簡単でしょう。
総選挙結果とその後の政治体制
もちろん、小池新党は、政策うんぬんよりも、小池人気に依存する部分が多いのでしょう。そして、マスコミは反安倍ですから、結果的に小池新党を押してしまいます。
また、ある程度の支持基盤を持つ民進党議員も、民進党を見限って小池新党に寝返るケースが多々現れるでしょう。
解散総選挙に打って出た後に生じる現象は、今回の都議会議員選挙に似たような現象となるでしょう。
その意味するところは、仮に準備不足であったとしても、小池新党全国版は善戦するであろうということ。
これによる最大のダメージは、おそらくは民進党が被ることになるのでしょうが、自民党にもある程度のダメージを生じることは、これは致し方のないことであると思わざるを得ません。(今回の都議会議員選挙ほどには、ひどくしないことが肝要ですよ!)
しかしながら、唯一の救いは、小池氏の政治的立場が安倍自民とそうそう違わないこと。
だから、仮に自民党が大敗したところで、安倍自民と小池新党は連立政権をつくればよい。その時に、小池新党の議席数が安倍自民を上回るなら、小池新党側から総理を出すことになるのですが、全国規模の選挙であれば、まさかそこまで負けたりはしないですよねえ、、、
まあ、それ以前に、東京都連対策などをきちんきちんとやっておけば、たぶん大丈夫だと思いますが、、、
私個人的には、小池総理も悪くはない(都知事ですので無理なのですが)と考えておりますが、人材不足は否めません。安倍自民も抜かりなくきちんきちんと作戦を実行しなくてはいけません。安倍自民に死角があるとすれば、解散時期を遅らせすぎること。解散時期が遅れれば遅れるほど、小池新党に十分な時間を与えることになってしまいます。
また、衆院任期が近づいてまいりますと、選挙のタイミングを自由に選べるという政権与党のアドバンテージがなくなってしまいます。ここは、年内総選挙を目標に、首都圏の体制立て直しなどの手を早急に打つことがベストではないでしょうか。
公明党の苦難
都政と国政で二股に分かれております公明党の立ち位置は、この先少々難しいことになっております。第一に、公明党の支持を失った自民が都議会議員選挙で惨敗したことは、公明党の力を見せつけているという見方もあります。一方で今回の選挙は、元々小池氏が強く、公明党が自民と組んだとしても共倒れになっていた可能性も高いものと思われます。
一方、公明党には国政の選挙でどうするか、という問題が生じます。今回の経緯を考えれば、小池新党が国政進出する際には、自民党との連携を解除して、小池新党と組むのが自然の流れでしょう。しかし、これが意味を持つのは、小池氏が政権を奪取する場合であって、引き続き安倍自民が政権の座にとどまるのであれば、公明党は自民党を切るわけにはいきません。
公明党にとって最悪の結果は、自民が第一党となり、小池新党と連立政権を(公明党抜きで)樹立してしまうこと。公明党にとって何より重要である、政権サイドの立場を失うことになってしまいます。
そう考えれば、公明党は自民党の機嫌を損ねるわけにもいかず、かといって小池氏に流れる人気の中で選挙をいかに戦うかも考えないわけにはいかない、難しい運営を迫られることになります。これはもう、ご愁傷さま、としか言いようがありません。
一つの良いニュースは民進党が滅亡するであろうということ。たたかいの舞台は、より現実的な政策をめぐるところに移動するのでしょう。
これは結構なことではあるのですが、そうであればあるほど、油断はできません。それぞれに、大いなる奮起をお願いしたいところです。