篠田英朗氏の4/9付けBLOGOS記事「社会運動家化する『専門家』たちの『責任』」にコメントしました。
西浦理論に関する詳細は不明ですので、一般的な数理解析の知見をベースに議論いたします。
まず、病気の伝搬は、核分裂、レーザの誘導放出、情報の伝搬、新製品の普及などと同様に、分枝過程(ブランチング・プロセス)という数理モデルで記述されます。
このモデルは、他の影響なく自然発生するケースと、他の影響により発生するケースを想定し、前者についてはその頻度、後者については、一つのケースがいくつのケースを生み出すかという「再生産数」と、これに要するタイムラグ、再生産数のばらつきなどがその過程を支配します。
そして、いったんモデルを作れば、実際のケース数の推移から、各パラメータを推定することが可能で、パラメータが推定されれば、これを用いて未来を予測することもできるのですね。
そういうわけで、西浦氏がこのあたりの分析を正しく行っていれば、「西浦理論」はかなりの精度を持つと考えられます。
このモデルの面白い点は、パラメータを操作することができる、これによって未来を変えることができるのですね。
新製品の普及であれば、宣伝を打つことによって自然発生の頻度を上げることができる。核分裂であれば反射材を挿入することで再生産数を上げることができる、等々がおこなわれているわけです。
で、病気の伝搬であれば、濃厚接触数を減らすことで再生産数が減る、簡単な話です。
現実のブランチングプロセスを開設した読み物にマルコム・グラッドウェル氏の「急に売れ始めるにはワケがある」がありますが、この書で同氏は「少数者の法則」を説明します。
再生産数には極端な偏りがあり、この過程を支配するのは、多数に伝搬する少数者の存在だというのですね。
だから、夜の街に繰り出す人が何十人にも接触しておれば、それをやめることで大幅に接触を減らすことができる。
そこに注目すれば、八割減も現実的であるように思われます。