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核融合のインパクト

先日のブログで、核融合の実用化を2050年とする記事をご紹介しましたけど、2030年代の実用化を目指すなどというニュースが本日流れておりました。その内容と我が国のエネルギー政策への影響について、ちょっと考えてみましょう。


早まる実用化:10年後にも!

「核融合発電、実用化が早まると期待」と題してFISCOが伝えましたニュース(【本日の材料と銘柄】)は、以下の通りです。

英トカマク・エナジーなどスタートアップの参入が相次ぎ、国家主導で開発が進んできた核融合発電の実用化が早まると期待を集めると、日本経済新聞が報じている。報道によると、商用化は2050年以降といわれていたが、各社は人工知能(AI)や超電導磁石など新技術を取り込み、30年代の実現を目指すという。核融合発電関連企業が注目されそうだ。

このAI技術といいますのは、プラズマを安定化させるための制御にAIを使うというWIREDの伝えた技術でしょう。

また、日経XTECH(クロステック)の本日付の「核融合炉の中核部品は日本とロシアが独占 夢を見た欧州は後手に」と題する記事によりますと、『ジャイロトロン』と呼ばれる高周波発振用の真空管の開発に欧州勢が失敗し、現在先行するのが日本とロシアであると。

2025年運転開始予定のITER用のジャイロトロンは、日本、欧州、ロシアがそれぞれ8本ずつの供給を予定していたが、最初は日本とロシアの4本ずつで走る予定になったとのこと。

ロシアのウクライナ侵攻により、ロシア製のジャイロトロンの納入に赤信号が灯っており、一応、輸入禁止措置の対象外とはなったものの、先行きは予断を許さないとのことです。いよいよとなれば日本が8本供給して立ち上げるとも書かれています。この世界で、我が国の存在感が高まっておりますことは、結構な話だと思います。

いずれにせよ、もうこんなところまで来ているのですね。確かに2025年に実験炉が動けば、2030年代に実用炉が動き出すのは、さほど難しい話でもない。いよいよ諸事、核融合時代を見据えた戦略策定に切り替えなくてはいけません。(下図はITER。QSTウエブサイトより)

消える諸問題:温暖化、資源、...

2030年代といえばたったの10年先です。そんな近い未来に核融合が実用化されるとなりますと、これまで大騒ぎしてきたエネルギー関連の問題解決の道筋というものが大いに変わってしまいます。

まずは、昨今の大問題であります、地球温暖化の問題と、炭酸ガスの排出抑制ですが、核融合が実用化されれば炭酸ガスを出さずに発電できる。その電力で水を電気分解すれば、炭酸ガスフリーの水素が得られます。

自動車は、EVなり、水素を燃料とするFCVなりにすれば炭酸ガスフリーとなるのですね。住宅にしたところで、オール電化にすれば炭酸ガスなど出てこない。そして、大幅な炭酸ガスの排出抑制がなされるなら、他の分野で少々石油や天然ガスを使ってもさほどの悪影響は生じない。地球温暖化という問題は片付いてしまいます。

第二に、エネルギー資源の枯渇という問題も、さして心配することはなくなる。地下資源は遠慮なく使っても構わないことになります。もちろん、炭素源として、これらの資源は引き続き有用でしょうが、炭素資源としては豊富な石炭が使えますし、炭素は木材や他の植物系材料の主成分でもあります。つまり、木炭が炭素なのですね。

原発の最重要課題は放射性廃棄物の削減に

第三に、ウラニウムやプルトニウムを用いる原子力発電は、炭酸ガスを排出しないエネルギー源ではあるのですが、温暖化の問題が片付いてしまいますと、そのメリットは失われてしまいます。

温暖化の問題が軽減化するなら、当面不足する電力も化石燃料で補うことができますし、先行きは核融合発電になるわけで、核分裂を用いる原子力発電の出る幕は無くなってしまいました。

一方で、原子力発電は、現在処理の見通しが立っていない放射性廃棄物(使用済み燃料と廃炉時の廃材)を生み出すわけですから、できる限り運転は控えめとしなくてはいけません。そして、早期に核融合に切り替える準備をしなくてはいけません。

放射性廃棄物は、そのまま埋設すれば無害化するのに十万年かかるということで、これをやろうという動きもあるのですが、そんな先までのことに、とても責任は持てないというのはもっともな話です。

一方、高速増殖炉を利用いたしますと、放射性廃棄物の無害化までに必要な年数を300年程度に短縮することができるとされております。300年も長い年月ではありますが、それでも全くできない相談でもない。300年は、十万年よりも、ずいぶんと短いのですね。

ところが、高速増殖炉の実証炉『もんじゅ』の運転に失敗、このプロジェクトは凍結になってしまった。これは、使用済み核燃料の再処理計画にも重大な影響を与えるし、放射性廃棄物処理に対する考え方を一から見直さなくてはいけない。でも、こんなことをやっているうちに核融合が実用化されてしまいますと、ここに原発の生きる道はなくなってしまいます。

確かに今ある原子炉はコストがかかっており、できるだけ使うのが経済的には有利なのですが、同時に生み出す放射性廃棄物という負の資産を考えれば、これをなるべく少なくしたいところ。トータルで最も経済的となるのはいかなる道かということをよく考えなくてはいけません。

おそらくベストの道は、稼働させる原子炉は必要最小限とし、かつこれを減じることができるよう、他の発電手段、ないしは蓄電・送電手段を充実させて自然エネルギーも余すことなく利用することではないか、というのが私の思いです。

アベノマスクの保管費用が問題視されたことがありましたが、放射性廃棄物を十万年保管する費用が一体いくらくらいかかるか、一度見積もっていただきたいものです。それはおそらく、とてつもない高コストであり、いま平気でいられるのは、単に考えていないからだ、というのが実情ではないでしょうか。

核融合発電が電力源となれば、今日の原子力発電はこれにリプレースされることとなりますから、新規の原発計画は凍結するのが合理的です。そして、建設済みであっても稼働開始していない原子炉は、汚染されていない炉体への放射能汚染を防ぐため、そのまま運転せずに済ませたいところです。

我が国に対応は可能か?

福島のトリチウム含有排水の処理を巡って、置き場所がなくなったから海洋放出させてほしい、という主張がなされているように聞こえてしまうのですが、これはものすごく無責任な物言いだと思います。

本来であるなら、置き場所はきちんと確保したうえで、無害かつ合法的だから流します、といえばよい。置き場所がないことは、当事者の怠慢を表しているだけで、トリチウム水を海に流してよい理由にはならない。

こういう姿を見ていると、同様な主張を、いずれは放射性廃棄物に関しても言い出すのではないか、そんな疑いすら持たれてしまうのですね。

事業者やこれを許認可する官庁は、将来起こるであろう問題も予測して、対応を立案し方針を決定しなくてはいけません。その責任が、これらの権限を持つ者には伴うこと、これは、当然の話です。

過去に巨額の投資をしてしまいますと、この経費を回収するまでは引き下がるわけにはいかない、という意識が判断を鈍らせます。これは『サンクコスト・バイアス』と呼ばれる心理的効果で、判断を誤らせる原因になる。判断はあくまで、現在何がベストか、を基準とすべきで、過去に引きずられてはいけません。

責任問題などを考えてしまうと、これはなかなか難しいことでもあり、そういう場合はトップを挿げ替えるなどの荒療治が必要になります。軌道修正がトップ交代だけで難しい場合には、その周辺の入れ替えも必要になるのですが、、、

国の行く末を決めるもの:人材

第四に、国際的には国家間の立ち位置というものが大きく入れ替わる。現在まではエネルギー資源を持つ国が圧倒的に有利であったのですが、10年後からは技術を持つ国が有利になる。技術というものは自然に生まれるものではなく、人間が作り出すものですから、優秀な技術者・研究者を抱える国が有利になるのですね。

我が国は、現在のところ良いポジションに付けているのですが、先日のブログにも書きましたような、NTTの優秀な技術者の3割がGAFAに転職してしまうなどという話を聞きますと、これも安心していられる状況ではないのですね。我が国の技術開発環境を早急に改める必要も、同時にあるというものです。

そもそも、日本出身のノーベル賞受賞者が続々と誕生するのはめでたい話ではあるのですが、その少なからぬ人たちが米国籍というのは大問題だと思うのですね。我が国は、一線級の人材を十分には活用できていない。そんなことでは、厳しい技術開発競争に後れを取ってしまいます。

その他の核融合プロジェクト

ITER(イーター)以外にも、いくつかの核融合プロジェクトが開始されております。これらはITERよりも早期の実用化を目指していたのですが、ITERの実用化時期が早まりますと、団子状態で実用化に突入しそうです。

その一つは、大阪大学発のベンチャー”EX-Fusion”で、大出力レーザをトリチウムと重水素を含む氷の塊に照射して瞬間的に高温・高圧を作り出し、核融合を起こすというもの。本年1月に同社は1億円の資金を調達し、いよいよ実験に乗り出すというニュースが流れております。

レーザ核融合は、もしかすると小型に装置が構成できるかもしれず、そうであるなら船舶などの動力源となる可能性があることから注目されます。磁場閉じ込め型の核融合装置は、巨大な装置になってしまうのですね。

その他、磁場閉じ込めではありますが、磁場形状を改良したヘリカル・フュージョンなるスタートアップも創業されております。これらベンチャーの特徴は、開発のスピードアップにあります。つまり、政府系の研究が、長期にわたる安定な職を提供する美味しい話であるのに対し、民間資金によるベンチャーは、短期に成果を上げ、巨額のリターンを狙うという特徴がある。そして、社会にとってインパクトがあるのは早いこと。

もちろん、これらの動きを見たからこそITERも開発スケジュールを前倒しにしているのでしょう。民間に先を越されては、巨額資金を投じた政府プロジェクトの沽券にかかわりますから。

ここは、どっちもがんばれ、といっておきましょう。

海外のプロジェクト

オンラインジャーナルBusiness Insider Japanが2022.2.1に伝えた記事「世界が注目の『核融合炉』。日本のベンチャーもイギリス法人を設立、覇権を握るのは?」によりますと、実証炉の稼働は早ければ2020年代と。同記事のベンチャー一覧表へのリンクを以下に掲げておきます。

これをサポートしている人たちの中には、ベゾス氏、ビルゲイツ氏など、おなじみのお名前も見られ、投資金額も数億ドル以上と、本気ぶりがうかがえます。日本企業では、ジャイロトロンを製作しているキヤノン系列会社の名前がちらほらと見え、我が国も決して後塵を拝しているわけでもない。

こうしてみますと、核融合への流れは、もはや本決まりであり、我が国も今のところは良いポジションに付けている。この好機を逃さず、うまく波に乗って次の時代へと繋いでいきたいものです。

常温核融合という伏兵も

常温核融合は、発表当時はフェイク扱いされたこともあったのですが、何らかの未知の現象が起こっていることは、ほぼ確実視されております。そして、これまで知られているメカニズムでは考えにくい、大きな熱量が発生しているのですね。

確かに学問としては、そこで何が起こっているかを説明できなくては、学問研究とはなりません。でも、その現象を応用する立場なら、巨大な熱が発生するという事実それだけでも大いに役に立つ。つまり、その熱をエネルギーとして利用すればよいわけですから。

Wikipediaの『常温核融合』も、なかなか複雑な書き方となっておりますが、最後の部分、以下の記述は注目に値します。

2018年に株式会社クリーンプラネットが100wモデルを完成させ、2021年5月に1kW相当の過剰熱を長期的に発生させるプロトタイプを試験運転している段階である[55]。クリーンプラネットのシステムは、比較的安価なニッケルと銅と軽水素を用いる。具体的には14nmのニッケルと2nmの銅を多段に積層したチップ(発熱素子)を真空状態に置き、軽水素を封入して加熱すること、ニッケルと銅の積層膜内を水素原子が表面に向かって拡散し反応が誘発され、加熱に用いたエネルギー以上の発熱を長時間放出するシステムである。基礎実験では、一度の水素の吸蔵で900度以上の発熱が120日以上の継続したとされる[55][56]。また、2021年9月28日に三浦工業と共同開発契約を締結し、実用化に向け工場の乾燥工程などで使う高温蒸気を発生させるボイラーを想定して製品化を進め、2022年にプロトタイプを製作し、2023年には製品化する予定だとしている[56][55][57]。

[55] “量子水素エネルギーの実用化へ向けて”. 株式会社クリーンプラネット. 2021年11月4日閲覧。

[56] “「核融合・熱」によるボイラーが実用化へ、金属積層チップで熱を取り出す”. 株式会社 日経BP. 2021年11月4日閲覧。

[57]“三浦工業とクリーンプラネット 量子水素エネルギーを利用した産業用ボイラの共同開発契約を締結 ~画期的なクリーンエネルギーによる低炭素社会の実現を目指して~”. 三浦工業株式会社. 2021年11月4日閲覧。

民間企業にしてみれば、難しい理屈はどうでも良いのですね。要は、大した燃料を投じなくても、ボイラーがちんちんに加熱して、大量のスチームが出てくれば、それでよい。学問などというものは、現実を後で説明することがこれまでもありました。それだって、充分に意味のあることだと思いますよ。

まあ、もちろん、それがダマシでなければ、というのが前提ではあるのですが、、、


まだもっと書くべきこともあるかと思いますが、本日のニュースということで、まずはここまでのところを公開しておきます。

1 thought on “核融合のインパクト

  1. mi.mino

    聞かせてもらった!人類は滅亡する。
    まあ、うまくやってもらいたいものだ。
    核分裂の最初の実用が日本への投下となったように技術より、政治的側面の方が心配だ。

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