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日本消滅!とマスク氏

総務省発表の2021年人口統計で、日本の人口減少幅が過去最大となったことから、イーロン・マスク氏が「日本はいずれ消滅するだろう」とつぶやき、これがあちこちでニュースになっています。これもまた、線形思考の誤りと思われますので、ちょっと考察を加えておきましょう。


人口の推移予測

2021年の日本の人口が2020年に比べて644,000人減って125,502,000人になったというのが、この人口統計です。これを直線で伸ばせば、195年後に日本の人口はゼロになる。日本消滅です。【完】

もちろんこんな簡単な話ではないとは思いますけど、イーロン・マスク氏の懸念されているのは、要するにそういうことでしょう。

何でも直線で考えてしまうのが、少し前のこのブログでもご紹介しましたけれど、人間理性の悪い癖、でも、人口の推移というのは、直線ではないのですね。

人間を含む生物の固体数の増加は、成長曲線と呼ばれるS型のグラフで表現される形に変化いたします。で、減少する方は、となりますとこれがあまりはっきりしたグラフは知られていない。でも、増えるほうが曲線なら減るほうも曲線だろうぐらいのことは想像がつきます。

で、具体的に考えてみると、昨年に64万人あまりの人口減少があり、この数字は巨大な数字なのですが、1億2千5百万人の中の64万人だから、あまりめだたない。これが人口が百万人になった時点で64万人もの人口減少が1年間で生じたら、これは大問題になるのですね。たったの1年間で、日本の人口が半分以下になってしまうわけですから。

直線的に減るという意味は、つまりそういうことなのだが、それがわかっているようには全然思えないのですね。そんなことが起こると、お思いか? ちょっと、想像力が足りないんと、ちゃいまっか?

普通に考えれば、人口の変化などというものは、減少幅一定で起こるものではなく、減少比率一定で起こるものだと考えるべきでしょう。昨年減少した日本の人口64.4万人は総人口1億2千5百万人の0.5%ほどなのですね。だからほとんど目立たない。この比率が、この先ずっと続くというのが普通の考え方でしょう。で、人口が百万人になった時の0.5%は5千人で、64万人に比べたら全然違う。百分の一よりも少し少ない程度なのですね。

北杜夫氏がかつて、ウイスキーを永久に飲み続ける方法を紹介されておりました。半分まで飲んだところで、水を入れて満杯にすればよいというのですね。半分量の水の充填をおこなった時点で、体積は最初と同じなのですが、ここに含まれるウイスキーの量は、前回充填時の半分になっています。でも、このような形で比率で減っていくもの(この場合1/2)なら、1/2、1/4、1/8、1/16と、どんどん少なくはなっていくものの、永久にゼロにはなりません。

これがウイスキーの場合は、どんどん薄くなって、しまいには飲めたものではないのですが(だから北杜夫氏は、それ以上薄めずに全部飲んでしまったと)、人口密度がどんどん減った場合には、それほど大きな問題があるわけではない。むしろ、広々していて住みやすいくらいではないでしょうか。

しかも、その結果としての環境の激変があれば、人口が一定の比率で減少し続けるかどうかも怪しくなるのですね。

と、いうわけで、人口の減少自体は、大した問題ではない。問題は、人口構成と国際関係ということになります。


5/17追記:毎年0.5%ずつ人口が減少した場合、人口が1/2になるまでに何年かかるかといいますと、実に140年なのですね。もしもChromeをお使いなら、新しいタブを開いて1.005^140を検索すると2.010などという数字が出てきますけど、これがつまり、0.5%の増加減少が140年続くと2.010倍(分の一)になるというわけです。

まあ、ここまでは変化が遅いのですけど、指数的変化の恐ろしいところは、その先が急変するということ。1/2が10回繰り返されると1/1024になる。140年で半分になるなら1400年で1/1000になってしまうという点なのですね。

でも、人口減に関してそうそう心配することがないという意味は、年0.5%の減少は、現在の様々な社会的要因の結果としてそうなっているという事実で、140年先に、この条件が同じかどうかなどという保証は全然ない。むしろ、変化していてあたり前でしょう。

アゴラに本日(5/17)西村健氏が「人口減少で何が悪い?:イーロン・マスクが言う日本消滅はない!」というエントリーを上げていろいろと反論されていますけど、まあ、ここはそう力むところでもないように思います。

高齢化の問題

人口が減少して一つ生じる問題は、高齢者の比率が増え、少ない労働人口で多数の高齢者を養わなければいけない、年金が払えなくなるという問題があるのですね。

でも、高齢者が働かず、年金頼りの生活をするのは、体力的に働けないというケースもあるのでしょうけど、定年退職という制度や、働いて収入を得ると年金が減額になる制度など、社会制度面で高齢者の就業を阻害する要因も多々あるからなのですね。

さらには、定年制は必須と多くの企業が考える理由の一つに、働かないおじさん問題がある。働かないおじさんも、定年に達した時点で辞めてくださるのは、一つの救いではあるわけで、定年をなくしてしまったら、働かないおじさんは死ぬまで職にとどまってしまう。何しろ働いていないのだから、本人は、なにも困りはしないのですね。

でもこの問題は、定年制度で解決するよりも、雇用制度全体で解決すべき問題で、企業が過去のいきさつにとらわれず、必要な人、役に立つ人を雇用し、不要な人、役に立たない人には辞めていただくという制度に切り替えて、社会制度の側も、働いたからといって年金その他で不利にならないようにする、否、むしろ働けば働くだけ得になるような制度に切り替えていけば、高齢者もちゃんと役に立つ形で働いて、税金を払う側に回ってくれるはずなのですね。

少なくとも現在の高齢化は、単に寿命が延びているだけではなく、健康寿命が延びている。高齢者のみんながみんな寝たきりというわけではない。年齢にかかわらず、働ける人間には働いてもらわなくてはいけません。

そして、高齢者の定義が、現在65歳以上であるのを80歳以上くらいに変えていけば、高齢化問題は片付く。これをいきなりというのは無理でしょうけど、2年に1歳くらいの割合で上げていけば、さほどの混乱も生ぜずに、高齢者問題が雲散霧消する。結構な話ではないでしょうか。

これはもっと昔から、寿命の延びに合わせて、少しずつやっておくべきことだったのですが、、、

国際関係という側面

人口は、国の力、国力に関係してくるだけに、人口減を危惧する考え方もあります。しかしながら、国力とは相対的な問題であり、我が国の場合には、たとえば中国との比較が問題になる。中国の人口予想ですが、たとえば本川氏の「社会実情データ図録」によりますと、インドと中国の人口予測は下図のようになっております。

驚くべき点は二つ。第一に、中国は本年あたりから人口が減少に転じるということ。第二に、インドの人口が間もなく中国を抜き、世界最大になるということ。近隣の他の国も人口が減っていくなら、我が国の人口減も、国力という意味では、そうそうあわてる必要はありません。

少し前のこのブログにもGDPを国際比較したグラフを掲げましたが、インドは、日本の10倍以上の人口を持つ一方でGDPは5割増し程度と小さい。インドのGDPは、中国のGDPの1/4以下なのですね。

と、いうことは、この先の発展の余地がインドには多分にある。昨今、ロシアとの関係でインドをめぐる綱引きが盛んですが、日本にとってインドはぜひとも友好関係を深めたい国。遠交近攻という言葉もあります。昔中国、今インド、です。ここは頑張らなくてはいけません。

なお、インドにパキスタン、バングラディッシュを含めた人口は、20年ほど前にすでに中国を抜いている。この3か国を合計する意味は、1947年にパキスタンが分離する以前はこれら3国は全部インドだったからなのですね。でも、これら3か国は相当に仲が悪く、この先一体化する可能性はほとんどありませんから、これらは別の国と考えておくのが正解でしょう。

まとめ

と、いうわけで、マスク氏のこのつぶやきは我が国で驚きをもって大きく伝えられたのですが、実際問題としては、そうそうあわてる必要はない。むしろ問題は、高齢化に対応する社会制度の整備が迫られているということ。また、この問題は、我が国の働き方改革にも深くかかわっており、総合的な社会制度の見直しが迫られているということでしょう。

他にも人口減が生じている国々がある中で、マスク氏が特に我が国に言及し、「それは世界にとって大きな損失となる」とまで語っていただいたことは、日本国民としては喜ぶべき点、我が国の文化が評価されてのことだと思います。

人口減はさしたる心配はないと言いましても、文化がどうなるかは別問題。こちらの方も、しっかりと伝統を引き継いでやっていかなくてはいけません。(ふうむ、、、ひょっとして、アニメとか、そういう方面かな?)まあ、細かいことは、置いておくことといたしますが。

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