アゴラ編集部の5/19付けアゴラ記事「三角関数って本当に必要なの?」は、藤巻健太衆院議員のツイートを批判して、三角関係の必要性を強調しております。本日はこの問題に関して、別の角度から議論したいと思います。
この問題は、少し以前のこのブログのエントリー「文系とジェネラリスト」でも議論したのですが、『文系問題』の一つの表れであるように思います。
藤巻議員の主張は、「三角関数よりも金融経済を学ぶべきではないか」という簡単な話なのですが、金融経済といいますものは、昔の相場師のような、裏情報や第六感、職人技に近いような様々なチャート技術に頼って行う、という側面も確かにないわけではないのですが、近年ではこの世界にも情報化の流れが押し寄せております。
最近の話題は、「フィンテック」といわれるような、情報技術をいかに金融の世界に利用するかという話で、仮想通貨やらXXペイなどが話題となっているところです。この動きは、実はかなり以前からあって、フィッシャー・ブラックらが1970年前後に導いた確率微分方程式あたりを嚆矢とするのではないかと思います。これで、様々なデリバティブ(金融派生商品)が開発され、資金の流れを促進する一方で、金融危機を招いたりもしているのですね。
こういう世界を考えますと、金融経済も、その先端部分では数学的な基礎知識は必須なのですね。
三角関数は、フィンテックの一つ、生体認証で活発に用いられております。たとえば、虹彩パターンをコード化する際に、虹彩の放射状パターンをフーリエ変換してスペクトルの形で個人を識別する生体情報とする手法が世界標準となっております。
また、市場の動きを知る際に、様々な変動要素を除去するのですが、その一つに周期的変動があり、これを求めるためにはフーリエ変換が普通に使われております。だいたい、指数関数やら対数などが、確率過程を記述する方程式には普通に表れており、三角関数は要らないなどということが言えるわけもない。
私はお客さんに徹するのだ、俺は職人的相場師で生きるのだ、チャートこそ我が命、という人になら三角関数など不要なのですが、それでは最先端の金融経済を扱うプロフェッショナルにはなれません。このような人材を養成する際には、数学的な手法も自由自在に使いこなし、最先端の金融工学の世界でトップを取れるような人材を育成しなくてはいけません。
そういう意味では、世界で通用する経済学のスペシャリスト教育を目指す以上、三角関数くらいは、常識として覚えていなくちゃいけないのですね。(指数対数や微積分、確率統計も必要ですよ。)
と、いうわけで、アゴラ編集部の主張はごもっともですが、もう少し掘り下げが欲しい所でした。まあ、このエントリーもそうそう掘り下げているわけでもないのですが、掘っているうちに、あまり力を入れて議論する必要性を感じなくなってしまった、ということもあるのですね。
このくらいのことは、ハッキリ言って、常識、ですから、、、
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