有馬純氏の5/25付けアゴラ記事「G7気候エネルギー大臣会合と国内石炭火力」へのコメントです。
我が国は、他国に引きずられるのではなく、我が国に都合の良い形で、独自の戦略を打ち出していくべきでしょう。主要な論点は以下のようなものではないかな?
1)2030年代の核融合実用化を目指す。電力から、水素や液体燃料を作る技術もものにしておけば、この時点で、温暖化問題、資源問題はなくなるのですね
2)天然ガスの安価な輸送手段を実用化する。アンモニアもよいのですが、アルコールの方がよさそうに思えます。こちらを早期に実用化すれば、現在の日本の弱点である、天然ガス資源にアクセスの悪さは解消されます
こういった工程表をきちんと持って、それまでのつなぎという形に石炭火力を位置づければ、諸外国も、そうそう無茶は言わないと思うのですが、、、
以下はブログ限定です。
まず、1)の核融合ですが、以前のブログで書きましたように2030年代実用化の可能性が上昇しております。この可能性を高めるためには、必要な資金を提供したり、国公立研究所、大学等でもこれらの研究に取り組むよう、政府の指導力を発揮すればよいのですね。
このような行為は、単に核融合発電の実用化時期を早めるだけでなく、実用化された時代に、日本がその技術の主導権を持つことも可能にいたします。特許を押さえるとか、ですね。
ポイントは、核融合技術が果たして本当に2030年代に実用化できる程度の難易度なのか、という点なのですが、ここにきてその可能性が高まったということは、難易度の見通しが変わってきた可能性が高いわけですから、まずは学識経験者を集めてこの動きを分析するところから始めなくてはいけません。
1)に付随する水素や液体燃料を作る技術ですが、まずは水を高い効率で電気分解する技術が必要になります。これには、おそらくは高温高圧の水に電気を流して分解するような技術が必要になるはずで、電力損失分が熱になるのですが、これが高温の熱の形で外部に放出されるなら、その熱を利用して発電することもできるのですね。
水素を液体燃料にする技術は、今日も「e-fuel」という技術開発が進んでいるのですが、こちらは、ガソリンと同じ炭化水素を作る技術で、かなり難易度が高いのですね。もう一つはアンモニアを作る技術で、こちらは今日も巨大なアンモニアプラントが稼働しておりますので技術的ハードルは低いのが利点です。
アンモニアは、天然ガスよりもはるかに液化しやすく、タンカーによる輸送費も大幅に下がります。でも、アンモニアは毒性が高く、刺激臭がする。まあ、刺激臭がするので、漏れがすぐに発見できるというのが利点でもあるのですが、そこらじゅうでアンモニアのにおいがするようになりますと、こちらはこちらで社会問題ともなりかねません。
もう一つの技術がアルコールに変換する道で、天然ガスを部分酸化して得た一酸化炭素と水素を反応させてメタノールを作るプロセスは既に確立されております。一酸化炭素は水素と炭酸ガスから作ることもできますので、水電解で得た水素からメタノールを作ることも容易です。
ところで、メタノールは毒性が強く、その利用技術を新たに開発する必要があるのに対し、炭素が一つ多いエタノールであれば、さほどの毒性もなく、そのまま自動車燃料になり、エチレンにも簡単に転化することが可能です。ただし合成プロセスは確立されたとはいい難く、新たな開発が必要になります。
とはいえ、そうであるからこそ、そうした技術を事前に開発しておけば、核融合が実用化された際に、時を同じくして、液体燃料の供給もできるようになる。電力、水素、エタノールの三本柱で走れば、今日のエネルギー源とほとんど変わらないエネルギー環境ができるのですね。
というわけで、こうした関連をよく見極めて、中長期戦略を立案して、コツコツと前に進めていくこと。その一方で、危機感をいだく諸外国を説得し、率先して核融合技術開発に取り組む一方で、石炭火力の目先の存続は認めてもらう、そうした賢いやり方が、我が国のリーダーには求められているのではないかと思います。
水素がんばれ