池田信夫氏の11/27付けアゴラ記事「高市政権の『隠れたインフレ税』の盲点」へのコメントです。
インフレを『税』ととらえ、それは各種課税システムの中でも『優れた税』であるという着眼点は面白いと思います。そして、国債発行残高を積み上げてしまった我が国にとっては、一種の「徳政令」的効果もありますから、積極的に推進すべき政策ということになるでしょう。
問題は、このエントリーで触れられている種々のリスクの評価と、これにいかに対処すべきかという点になると思います。まず、資本逃避に関しては、円安の進行が予想されるから起こることで、すでに円安である場合にはさほどの心配はいらないはずです。実際にこのような現象が生じたのは、円高低金利の時代で、円を借りて海外に投資する「円キャリートレード」が活発に行われたのですね。
第二に、通貨危機とハイパーインフレのリスクですが、確かにこのような状況に至った時点では、通貨安が発生しております。通貨危機なのだから、これは当然の話なのですが。しかし、ここに至る過程で、多くの場合、自国通貨高政策がとられております。そしてその結果、貿易収支やこれに資本収支を加えた経常収支の赤字が拡大して、通貨危機に至るというのが一般的なパターンです。
自国通貨高政策の破綻は、ポピュリスト政権の人気取り政策として、自国通貨を人為的に高く維持した際に発生しております。典型例はアルゼンチンで、兌換法などの自国通貨高政策により国内物価を低く維持したのは良いものの、国内産業の国外逃避を招き、政府の借り入れにより自国通貨高を支えきれなくなった時点で、自国通貨の暴落とハイパーインフレを招いております。我が国も民主党政権時代が、この一歩手前であったように、私には思われます。
もう一つは、通貨当局のプライドによるもので、ポンド危機がその代表例です。レーガノミクスの双子の赤字もこの初期症状で、日本は逆にこの恩恵を受けたのですが、結果的にプラザ合意というしっぺ返しを食らっております。さしあたり、我が国は経常収支が黒字を続けておりますので、あまり極端な政策に走らない限り、通貨危機のリスクは十分に低いと安心できるのではないでしょうか。