永江一石氏の2/20付けアゴラ記事「食品の消費税が0になると生活はどう変わるか」へのコメントです。
いくつかの点について指摘しておきます。
まず、IMFが消費税減税に否定的なコメントを出している点ですが、これは、IMFの設立目的を思えば当然であるように思われます。つまり、「融資:加盟国からの出資等を財源として、対外的な支払い困難(外貨不足)に陥った加盟国に、その要請に基づき、一時的な外貨貸付という形で支援を行い、その国の危機克服の手助けをします」というわけで、経済危機への対処が大きな目的なのですね。だから、日本のような債務残高の大きな国が減税をすることに対して否定的になるのは、当然の話です。
第二に、減税分がそのまま食品価格の下落には結びつかない、という点はその通りです。でも、「中小・個人店は慢性的なコスト高に苦しんでいるため、価格を据え置き、経営の立て直しに充てる可能性が高い」というのは、減税の一つの効果でもあり、これはこれで意味がある。無駄というわけではないのですね。
第三に、「赤字国債発行による日本経済への不安から円安が進んだ場合」というのが甚だ漠としております。つまり、食品の消費税率をゼロにする目的が、円安進行に伴う生活コストの上昇を一時的にカバーすることなのですね。円安は同時に、国内景気を改善し、企業利益を向上し、賃上げに結びつく。しかしこれにはタイムラグがあるため、その間の生活苦を救うための一つの手段として、消費税率減税があるわけです。
ところで、このメカニズムのうちに、企業利益が増えれば法人税が増える、賃金が上がれば所得税が増す、円安で物価高になれば消費税が増える、という効果も含まれているのですね。2022年のロシアのウクライナ侵攻以降、急速に円安が進んでいるのですが、税収は右肩上がりに増加しております。その額、年間3~5兆円といったところでしょうか。逆説的な話ではありますが、赤字国債発行による日本経済の不安から円安が進みますと、税収はさらに増加し、ひょっとすると年間5兆円くらい、補ってしまうかもしれません。
第四に、「『金持ちほど得をする』という矛盾もまたあります。100円のパンが安くなる恩恵は全員同じですが、高級ステーキやフレンチ、高級食材を大量に買う高所得者の方が、減税額(絶対額)は大きくなってしまいます」と書くのですが、これって物価の上昇もそうですよね。100円のパンはインフレの影響をそうそう受けないのに対して、高級ステーキなどの高級食材はインフレの影響を大いに受ける。おまけにお金持ちは、食品以外の出費も多いですから、円安インフレに伴う経済負担はお金持ちほど多くなるのですね。
なお、「エンゲル係数」という言葉がちょっと書かれているのですが、ここに書かれていない大事な点は、「低所得者層ほどエンゲル係数が高い」ことです。つまり、低所得者層ほど食品に対する出費の割合が高いのですね。だから、食品を減税すれば、その恩恵は低所得者層にあつく及ぶことになります。
以上述べてまいりましたように、この永江氏のエントリーは、突っ込みどころが多いのですが、では、ここで食品に対する消費税率をゼロにすべきかとなりますと、これはよく考えなくてはいけない。なぜかといえば、円安による物価の上昇は確かにあるのだが、短期間のうちに賃上げでこれをカバーできる可能性も高まっているのですね。
そうであるなら、今から消費税を下げる手間を考えるよりも、給付付き税額控除などの恒久対策を急ぐ方が良い。今日なおインフレに苦しむ層が一部にいるというなら、これに対しては、現金給付などのピンポイント的対応の方が効果的となる可能性が高い。
と、いうわけで、このエントリー、結論だけはさほど間違っておりません。ここは、十分な検討をしたうえで、実施する政策を決めるのが良いのではないかと思います。
十分な検討、、、ふうむ、岸田さんをメンバーに加えるのが良いかもしれませんね(冗談ですけど。)
