岡本裕明市の7/9付アゴラ記事「なぜ日本人の『流行モノ好き』は世界で突出しているのか?」へのコメントです。
日本人の流行モノ好きは私の見る限り韓国と並び世界で突出していると思います。流行っているとなると極端に消費が増え、ある日突然、ピークを迎え、その後、新興企業の株価のように一気に醒めていくのです。なぜでしょうか?
新製品の普及を予測する手法として「バスモデル」と呼ばれる数理モデルが使われております。これは、自分自身の判断で新製品を購入する「イニシエータ」と、他人が使用しているのを見て新製品を購入する「イミテータ」が存在すると仮定して、初期の新製品売り上げデータからイニシエータとイミテータが市場にどの程度存在するかを推定して売り上げを予測する手法なのですが、要は、日本には「イミテータ」が多い、ということですね。
確かに、日本人の特性のひとつとして、「横並び主義」がありまして、他人と同じようにふるまうのが世渡りの知恵のひとつ、と心得ている人が多い。笑い話で、日本人に何かをさせるための決めセリフが「皆さんそうされてます」だといいますけど、全くその通り。イミテータが多いというのはその通りなのでしょう。
ちなみにこのバスモデルは「分枝過程:ブランチング・プロセス」と呼ばれる確率過程の応用なのですが、分枝過程はきわめて幅広い物理現象に現れます。それは新製品以外にも、噂や情報の伝搬、姓の消長、ウランやプルトニウムの核分裂過程、レーザの誘導放出、疫病の伝搬、等々が同じ分枝過程で記述されるのですね。(参考)
分枝過程は、確率過程を含む数理モデルに詳しい人にとっては常識的ともいえるモデルだと思いますが、西浦氏がコロナの伝搬をこれで説明した時は、あまり理解してもらえなかった。専門家の常識と世間一般の常識が違うということ。人は得てして、自分が常識と考えることが世界の常識であると思い込んでしまう。ここに西浦氏の悲劇(?)があったように私には見えた次第。「民は之に由らしむべし、之を知らしむべからず」とは、よく言ったものです。