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補助金の狙いは生産コスト低下

杉山大志氏の7/12付けアゴラ記事「太陽光で電気代ゼロは隠れ補助金の消滅で幻想に終わる」へのコメントです。


多くの工業製品には、発売開始から時間が経つに従って、その累積生産量に応じて製造コストが低下する「経験曲線効果」と呼ばれる現象があります。薄膜製品では特にこの効果が大きく、例えば大画面液晶テレビなどでは、昔は1インチ1万円などと言われて30インチで30万円ほどしていたものが、今では5万円を切る価格帯となっております。

太陽光発電に補助金を出す正当性は、実は、この点にあり、立ち上がり当初の高いコストを負担する利用者に補助を行うことで利用を拡大し、ソーラーパネルの製造コストを劇的に低下させて、次世代のソーラーパネル利用者に安いパネルを提供するという意味合いが込められておりました。(参考:https://www.renewable-ei.org/pdfdownload/activities/REI_SolarIP_202412.pdf#page=13

ソーラーパネルの利用が拡大した当初は、我が国はこの分野で世界最大シェアを押さえており、日本政府が特にこの後押しをする理由は多分にあったのですね。でも、FITの導入は10年ほど遅れを取ってしまった。また、我が国における太陽光発電の利用も、必ずしも積極的であったとはいえず、結局、ソーラーパネルの分野で中国の後塵を拝する結果となってしまいました。

この意味するところは、我が国を含めて、世界が行ったソーラーパネル生産立ち上げを目指した補助金の利益、つまりはソーラーパネル累積生産量という経験値による利益は、その多くが中国メーカーの手にわたってしまいました。これは、日本の犯した産業政策の過ちのひとつだったといえるでしょう。

ソーラーパネル普及を金で釣るプロセスには、少々羊頭狗肉的部分もあるのですが、政府が少ない出費で多くの効果を得ようと思えば、誇大広告的部分があるのもやむを得ないかもしれません。いずれにせよ、将来は化石エネルギーは枯渇に向かう。ソーラーパネルの累積生産量という経験は、ある種の資産として残り、世界のユーザに還元される。胸を張れる話ではないけれど、それほど悪い話でもないように、私には思われる次第です。

1 thoughts on “補助金の狙いは生産コスト低下

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