杉山大志氏の9/17付けアゴラ記事「東京都水素タクシー600台で50億円もの税金が消える」へのコメントです。
この手の技術は、技術開発戦略といった、長期的視点が必要で、現在コスト的に引き合わない技術であったとしても、あえて補助金などで需要を喚起することで累積生産量を確保して、経験曲線効果によるコストダウンにより、我が国の関連業界が全世界のこの分野におけるリーダー的ポジションを得る、という方向性もあることに注意しなくてはいけません。
ただ、それが水素か、となりますと、私は少々懐疑的です。確かに、水素は発熱量がダントツに高く、燃焼させても出てくるのは水だけ。ある意味理想的な燃料ではあります。でも、沸点が低く、液化は非常に難しく、高圧気体で扱うことには危険が伴います。まあ、CFRP製タンクで、この問題は一応クリヤーされているのですが、それでも爆発の危険がないわけではない。
私が問題だと思うのは、一部に水素押しの人たちがおられることで、この方たちの水素を押す姿勢には、科学者というよりは、信者という方がぴったりくるとの印象を受けるのですね。これは、核エネルギーにも共通してみられる現象で、確かに核や水素は魅力的な技術なのですけど、一歩離れてみる姿勢がないと、正常な判断がしにくいという問題があります。つまり、判断ミスする可能性がある、ということなのですね。
ちなみに、私の一押しはエタノール、エチルアルコールで、一般にはお酒の成分として知られているもの。生分解性が高く、人間だってエタノールを分解する能力がある。火災の際は水をかければ消えますし、常温で液体で扱いも簡便。ガソリンの代わりに自動車燃料にもなるし、酸触媒の存在下で加熱すればエチレンを発生する。合成化学原料にもなるのですね。
まあ、エネルギー的には多少効率が悪い。酸素が入っておりますから。でも、アルコールランプは理科の実験でもおなじみだし、キャンプで調理する際の燃料にだって使われる。アルコールは炭酸ガスと水素から合成することも不可能ではない、オールマイティな燃料なのですね。まあでも、私は無理には押しません。中毒だと思われても困りますし。