池田信夫氏の11/3付けアゴラ記事「ガソリン減税はインフレの火に油を注ぐ」へのコメントです。
円安による物価高というのは、実は、円安進行による物価高なのですね。1ドル150円のレベルが妥当な水準であるなら、そこに到達してこの水準をキープすれば、為替はこれ以上の物価高要因にはなりません。これ以上際限なく円安が進むというのは、なかなか考えにくいのではないでしょうか。まあ、トランプ関税という、ドル高要因は控えているのですが。
ドル円の妥当なレベルがどの程度かという点が問題になるのですが、プラザ合意の時点では、1ドル165円付近が妥当と考えられており、これが150円を切って円高が進んだ時点で、行き過ぎたドル安を是正するためのルーブル合意がなされているのですね。https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12298599/www.esri.cao.go.jp/jp/esri/prj/sbubble/history/history_01/analysis_01_02_02.pdf#page=41 https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12298599/www.esri.cao.go.jp/jp/esri/prj/sbubble/history/history_01/history_01.html
実際には、円は1ドル120円から著しい時には100円を割る円高に進行し、日本は円高不況対策として、低金利と、国債を発行して内需拡大を続けた。それでも、国内の製造業は国際競争力を失い、工場が海外に逃避する、空洞化現象が進んだのですね。
現在の大問題は、国債発行残高の積み上がりであり、これを止めるためには、国内の生産活動を盛んにして税収を上げるしかない。もちろん、国民福祉を犠牲にするという道もないわけではないのですが、政治的にこれは難しいのですね。為替を維持しつつガソリン減税で国民の痛みを和らげるのは、良い作戦だと思いますよ。
幸いなことに、この5年程、税収は毎年2兆円程度ずつ増大を続けている。その理由の一つがドル円の適正水準への接近にあることは否定できないでしょう。何とかこのレベルを維持して、国内での価値の創出を増やす。あとは、冗費を節減して、出を制す作戦との両建てで財政健全化を目指す。これでいくしかないと思うのですが。