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魔法の税金、インフレ税の効果

中村仁氏の2/21付けアゴラ記事「インフレ持続で国庫に入る「インフレ税90兆円」を財政拡張の財源にする高市氏」へのコメントです。


インフレ税、結構な話ではないですか。それに、以下の計算は過小評価のように思われます。

「政府は180兆円のインフレ税収を得る一方、日銀は保有国債(価格下落)の損失が90兆円に上り、政府・日銀を統合すると、政府のネット取り分は90兆円となる」と、渡辺教授は説明している。

日銀の保有国債は、日銀バランスシートの借り方(資産の部)にあるのですが、これに対応する貸方の負債残高(日銀当座預金や紙幣発行残高など)は720兆円ほどあり、こちらもインフレで実質価値が減少いたします。

なお、インフレ税を効果的に徴収するためには、低金利を維持することで、インフレかつ低金利の維持により、主に高齢者が積み上げた巨額の預貯金残高に実質的に課税することが可能となります。これに対して金利を上げしてしまいますと、高齢者も高い金利を受け取ってホクホクになってしまいます。その分のお金は、日銀当座預金への付利により銀行が回収するのですが、これは結局、政府日銀が負担することになってしまいます。ここは、うまくやらなくてはいけません。

インフレ税の一部は、高齢者にご負担いただくこととして、その他はどうなるでしょうか。まず、物価が上昇するので消費者は出費がかさみます。でもこの分を賃上げがカバーすれば問題ないのですね。現に、このエントリーも、最初の部分で、「物価高対策で名目賃金を増やしてもらった勤労者が収める所得税も増える」と書かれていますね。この所得増が十分であれば、消費者も損はない。一方で、売値が上がりますので、売り手である生産者や流通業者は儲けが増えます。特に海外との競争にさらされる輸出関連企業は、大きな利益を手にします。自国通貨安が「近隣窮乏化」と呼ばれる所以です。

「安倍氏の時代はデフレと円高だったので、超低金利政策と財政膨張政策をとった。高市氏の現在はインフレと円安(通貨価値の半減)だ。そこで財政拡張をやったらインフレが進んでしまう。それが続けば不況になる」と述べている。アベノミクスの負の遺産で国債利払い費が急増してしまうため、政策金利もなかなか上げられない状況だ。

この部分は、いろいろと注意が必要な部分です。まず、「デフレ-インフレ」を議論するためには、物価上昇率の好ましいレベルを規定しなくてはいけませんし、「円高‐円安」を議論するためには、好ましい為替レートを規定しなくてはいけない。「アベノミクスの負の遺産で国債利払い費が急増してしまう」に至っては、何を言いたいのかよくわかりません。日銀の国債保有が増加したことと関係があるのでしょうか? 

国債は、政府が発行した以上、金利を払わなくてはいけませんし、小泉行財政改革以来増加が止まっていた国債発行残高が再び上昇に転じたのは、民主党政権からだったのですね。金利が上がれば国債利払い費は増加するのですが、これは、低金利を維持して量的緩和を行ったアベノミクスとは関係のない話でしょう。

金利は政府日銀が決めるものであり、景気の過熱によるインフレ進行が行き過ぎない限り低利を保つことにさほどの問題はありません。為替は内外の経済状況で決まるものであり、円安によるインフレを金利で抑制することは、内外の経済状況に基づく通貨交換レートの自動的調整を損ねる可能性もあり、注意しなくてはいけません。

物価上昇率の好ましいレベルに関しては、為替レートの大きな変動を避けるためには、世界の大勢と合わせておく必要があります。これはおおむね2パーセント前後なのですね。これに対して、我が国の物価上昇率は長い期間にわたってゼロ%付近で上下しておりました。物価上昇率は2022年の露宇戦争以来2%付近に上昇しております。これは、一時的なエネルギーコストの上昇を受けている可能性も高く、その影響を1~2年といった短期間での増減で判断することは困難でしょう。長期にわたって蓄積されてまいりましたデフレの影響を解消するには、かなりの時間も覚悟しなくてはいけません。

好ましい為替レートに関しては、1985年のプラザ合意の時点で165円/ドル程度が妥当と考えられており、150円/ドルを切った時点で行き過ぎた円高とみなされておりました。この認識は、当時の世界に共有され、これ以上のドル安進行を止めようとのルーブル合意がなされたのですが、円高はさらに進み100~120円、さらには80円割れという極端な円高になってしまったのですね。

この一つの影響が上のグラフにも示された「長期にわたるデフレ」であり、その結果としての「失われた30年」だったのですね。これを解消したのが、第一にアベノミクス(80円→120円)であり、その路線を継承した岸田政権の無策の策(→150円)であったわけです。高市氏のサナエノミクス(?)がこの路線を継承することは、さほどおかしな話ではありません。

実はアベノミクスは、全部うまくいったわけではありません。彼の掲げた三本の矢のうち、「成長戦略」はいまだ実現せずに終わってしまったのですね。これに関しては、最近高市総理が戦略を発表されています。こちらはこの先の展開に注目したいと思います。

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