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災い転じて福となせ、石油危機

池田信夫氏の3/9付けアゴラ記事「イラン戦争で『第3次石油ショック』は起こるか」へのコメントです。


その(2年間で45%も上がる狂乱物価の)原因は過剰流動性だった。日銀は1971年からマネタリーベースを40%以上増やし、物価を10%近く上昇させていた。これは「ニクソン・ショック」後の円高を抑えるための調整インフレだった。つまり狂乱物価の主犯は、OPECではなく日銀だったのだ。

70年代に物価が急騰した原因は、確かに円安誘導のための低金利政策がその一つですが、原油価格の4倍近い高騰もその原因の一つだし、田中角栄氏の「列島改造論」による不動産ブームを原因であるとする見方をする人も多くおられます。

でも、そもそも、ここで消費者物価が上がったのは、人々がお金を持っていたから。なぜお金を持っていたかと言えば、60年代の高い経済成長率があったのですね。下図は1955年以降の経済成長率ですが、1960年代は、いわゆる「高度成長期」と呼ばれる時代で、10%近い成長率が続いた10年でした。この結果人々は経済成長に対する確信を抱いており、豊かさを実感しており、多少の物価上昇も受け入れることができた。値上がりした消費財も活発に購入したのですね。

500兆円以上のマネタリーベースが日銀に「ブタ積み」になっている現状は、日本経済にガソリンが充満しているようなものだ。今までは20年以上ゼロ金利が続いたので、国民はインフレに慣れていないが、マネーストックは2020年のコロナ給付金で激増し、その影響が徐々に出ている。

一方の今日ですが、確かに、日銀当座預金は膨れ上がっています。これは、預貯金を預けられた銀行が、融資先がないがゆえに日銀に預けているからなのですね。融資先がない理由は、経済が成長せず、有利な投資先がないからなのですね。驚くなかれ、1995年からこれまでの30年以上にわたって、我が国のGDPは、ほとんど成長していないのですね。

ここが高度成長期直後の1970年代とは異なるところ。実はオイルショックの後も、スピードは鈍化しましたが、日本経済は引き続き成長を続け、1979年には「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン」などという書物が出版されるに至っております。それに引き換え、1995年以降は「失われた30年」などと言われる低成長時代が続いております。

エネルギーコストが上昇すれば、広範囲にわたって物価が上昇することは確かです。これに対して、マネーサプライのできることは限られております。住宅の断熱強化などの省エネ投資や、再生可能エネルギーを用いた発電プラントなどへの投資が活発化することはあるでしょう。しかしこれらだけでは限られた範囲にとどまってしまいます。

現在の日本経済が抱えた大問題は、有利な投資先がないこと。であるがゆえにキャッシュが日銀当座預金に「ブタ積み」になっている。有利な投資先が現れれば、これらの豊かな資金が投資に向かい、経済が活性化いたします。その際の副作用としてインフレが進むということはあるでしょう。しかし一方で人々が豊かになり、インフレを受け入れることもできるようになります。

ではどうすれば有利な投資先が生まれるか。それは、ざっくり言えば「環境の変化」によってであり、自然環境、技術環境、経済環境、社会環境などが変化すると新たな投資先が生まれる。

実は、この技術環境面では大きな変化が生じております。1995年のインターネット元年に始まる情報革命を我が国は十分に生かし切っていないのですが、ここにきてAI革命とも呼ぶべき大変化が生じています。さらには、核融合に代表されるエネルギー革命がまもなく始まると予想されております。これらの現在進行中の技術環境変化には、我が国はきちんと乗っていかなくてはいけません。これには政府の果たす役割も大きいのですが、「成長戦略」を掲げております高市政権のことですから、この辺りはしっかりやっていただけるでしょう。

もう一つ、経済環境面でも大きな変化が生じうる。つまり、エネルギーコストの高騰なのですね。これは、イラン空爆により、現在ただ今大問題となっているのですが、化石燃料はどのみち枯渇に向かう宿命にあり、これを先取りする形で我が国の産業が取り込んでいけばよい。実は、1970年代のオイルショックが同じ種類の大変化であり、これを我が国は、実にうまく乗り切っております。二匹目のどじょうが柳の木の下にいる。それが今なのですね。

有望な新しい技術が得られても、これを産業化するにはお金が必要。そのお金がじゃぶじゃぶあるというのは、何とも心強い話なのですね。必要は発明の母。厳しい環境は、技術開発の強力なドライビングフォースになります。まあ、技術が最も進歩するのは戦争の時なのですが、これは置いとくことといたしましょう。「厳しい環境は強い兵士を育てる。」巨額の制作費をかけて大コケした映画「デューン:砂の惑星(こっちはリメイク、メディアはこちら)」で、砂の惑星の住民が諭しておりました。技術者を育てるのも厳しい環境が一番。ここは、災い転じて福としなくてはいけません。政府のなすべき役割も、きっちりと果さなくてはいけません。

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